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RISKY―傷だらけの十字架―  作者: 桜井敦子
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6.再会 その2

土曜日。

リコの携帯が朝からなった。

携帯の主は沢田だった。

「おはよう。元気かい?」「うん。」

「今日はいい天気だし、ドライブにでも一緒に行こうかなと思って。」

期待に弾む沢田の声にリコはためらった。



「…ゴメンね、今日は友達と映画行く約束しちゃって」リコは思わず嘘を言ってしまった。




「そうか、残念だね。じゃあ、またの機会にしようか?」

「うん。ゴメンなさい。」


身支度を整えて、リコは昨年ボーナス払いで買った自前の中古車に乗って、家を出た。




向かう先は「尾藤」がいるだろうと思われるバイクショップだった。




車を走らせながら、リコは昨日あっちゃんから聞いた彼の噂をいろいろ思い巡らせていた。

『高校時代からケンカが強くて有名…』



そう言えば、別れ際、

『俺には、関わらないでくれ。

』とも言った…。


彼の人柄は、少し恐い感じなのだろうか…?


リコは少しだけ不安になった。



だが、お店の店員をしていれば、そんなに怖い対応をすることはしないだろう。



何とかネットでお店の場所を地図検索し、プリントアウトしたものを持って来たが、方向音痴のリコはしっかり迷って何度も同じような場所をぐるぐるしてしまった。




そして、やっと教えてもらった店にたどり着くことが出来た。




しかし、まだ安心は禁物だった。

この店の「尾藤」が果たしてこの間の彼なのかどうか…。



駐車場はあったものの、お店は意外と小規模である。



「いらっしゃいませ」

入ってきたリコに店員が声をかけたが、自分が明らかに場違いなのは良く分かった。




不思議に思う店員の視線を感じながら、リコは「彼」を探した。




見慣れないバイクとそのパーツはリコにとっては何が何だかさっぱり分からなかった。




一体、彼はいるのだろうか?

「いらっしゃい、何か探してるの?」

リコの背後からハードなファッションながら人懐っこそうな若い男が声をかけた。




「あ、あの、車の修理って出来ますか?」

リコは完全場違いなことを言った。



「うちじゃ車の修理は出来ませんけど。」

背後からもう一人、聞き覚えのあるハスキーで低い声が聞こえてきた。




声の方に振り向いた途端、リコの表情がパッと華やいだ。




「お前…」振り向いた顔を見て、声の主もあっと小さく驚いた。




声の主の店員はネームプレートに「尾藤」とあった。




「うわー、いたいた!良かったー!」

リコは思わず飛び跳ねて喜んだ。



尾藤はそんな様子のリコにただ呆気に取られるだけだった。




「ナニナニ〜!?ひょっとして知り合い!?」

最初に声をかけたもう一人の店員が興味深そうにリコと尾藤を見比べた。




「な、何でもねえよ!」

嬉しそうに顔を輝かせるリコと、なにやら気まずそうな顔の尾藤。

二人の対照的な表情に、店員は楽しそうにニヤついた。



「オィ、シン、お前彼女と何があったんだよ?」

尾藤のことを店員はシンと呼んだ。




「あの、彼にはちょっと危ないところを助けてもらって…」

それを聞いた店員はじーっと尾藤の方を見た。



「別に、ちょっとヤバそうだったから…」

尾藤はあさっての方に視線を反らして答えた。顔はやや赤くなっていた。




「あたし、尾藤さんにお礼を言いたくて、それで探していたんです。」

「そうだったんだ」

店員の口調は二人の関係に興味深そうだった。



「シン、お前外行って彼女の車見てやれよ。」


シン、尾藤はしぶしぶリコの車のボンネットを開けて中を覗いて見た。



「何か…変な音がして…」「エンジンオイル、全然替えてねーな。あと、ブレーキオイルもそろそろ交換した方がいい。」

何だかんだ言いながらも、尾藤は丁寧にリコの車を見てあげた。




「ただ、うちはバイク用のしか置いてないから、車用品の店で見ないとダメだな。どうすっかな…」

尾藤はボンネットから顔を上げて考えこんだ。




ブツブツ言いながらも、結構優しいところはあるらしい。



「シン、調子どうよ?」

先ほどの店員が外に出て来た。

「コン、うちじゃダメだわ。車用品屋行かないと」

「ならお前、彼女と行って来いよ」

「は!?」

コンと呼ばれて店員の答えに尾藤は思わず叫んでしまった。



「どうせお前、もうすぐ昼休憩だろ?カー用品屋寄ってその足で彼女と一緒に飯でも食って来いよ」

ニヤニヤとコンは尾藤に向かって言った。


尾藤はまたもや憮然となった。しかし、その頬はやや赤く染まっていた。




「す、スミマセン、そこまでしてもらったら悪いですから!それに、その、カー用品屋さんってどこにあるのか…」

「いいよ、オレが付き合ってやるよ」

尾藤は観念したように言った。



そう言うと、尾藤は店の裏側に向かいざま、先ほどのコンに「余ってるメットねえ?」と何やら聞いていた。




リコは初め何のことか分からなかった。

しばらくすると、一台の大型バイクがこちらにやって来た。



赤いオイルタンクには、HondaのCB1300SFとある。



バイクの主は尾藤だった。「後ろ乗れよ。メットは人のだけど。」


尾藤はリコにヘルメットを渡した。




(バイク、乗るんだ…)

CBにまたがった尾藤は、また一段とカッコ良く見えてしまい、リコは思わず見とれてしまった。

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