61.喪失 その8
その夜、リコが会社帰りにコンビニから出てきたところで携帯の着信音が鳴った。
「もしもし?」
着信元を見ると、近藤からだった。
「リコちゃん?俺」
「近藤くん……」
「今日、シンの奴が店に来た……」
近藤はそこまで言って言葉を詰まらせた。
「尾藤くんが……」
リコも近藤から聞かされた事実に言葉を失った。
「ごめん!」
電話口だったが、近藤は頭を下げて謝った。
「せっかくシンが傍まで来たのに、リコちゃんのところまで連れてってやれなかった……!」
近藤は悔しさを滲ませながら言った。
「近藤くん……」
「今日、奴は店にジャージを返しに来た。でも俺は頭来てアイツぶん殴って、散々なことを行って追い返した」
「……」
「俺はリコちゃんの為に何もしてあげれなかった」
電話口で話す近藤は涙ぐんでいるようだった。
「近藤くんの所為じゃないよ」
リコは静かに言った。
電話口の近藤は無言のままだった。
「尾藤くん、元気そうだった?」
「ああ、少し痩せたみたいだったけど」
「そうか……それなら良かった……」
しばらく二人は無言だった。
「今度奴に会ったら取っ捕まえておくから!」
近藤はリコに、せめてものリベンジを誓った。
近藤が慎也と会えた……。
それだけでもリコはちょっぴり前向きな気持ちになれるような気がした。
もしかしたら、これからもひょっこり出会えるのではないか、そんな期待が胸をよぎった。




