表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RISKY―傷だらけの十字架―  作者: 桜井敦子
58/110

57.喪失 その4

慎也の社長就任挨拶の後、リコの職場は騒然となった。



慎也の社長としてのスピーチを賞賛する人、口ばっかりじゃないの?と疑念を持つ人、若いクセに生意気だと言う意見。

しかし、何より女子事務員は慎也のルックスへの話題で持ちきりだった。



リコとハナは、そんな噂話から外れてただひたすら暗い気分だった。


もう業務は始まっていたが、リコはやるべき書類作成に手がつかなかった。


「ねえねえ、本城先輩」

噂話が好きそうな女子事務員がリコに声をかけて来た。


「あの尾藤社長と知り合いなんですか?」

パソコンの前で俯いていたリコは、驚いて顔を上げた。



「びっくりしちゃいましたよー!急にあのイケメン社長に駆け寄ったりしたんですから!」

そんな女子社員に、ゴシップ好きそうな男性社員まで近寄って来た。


「本城さんって、普段おとなしそうだけど、意外と大胆なんだね」

男性社員の言い方にリコは苛立ちを覚えた。


「ねえ、もういい加減にしようよ……」

ハナがさりげなく制するが、同僚たちは尚もリコを質問攻めした。



「社長とは前からお付き合いしてたんですか?」

「社長と結婚するつもりなんですか?」

「だったら玉の輿じゃないですかー!凄ーい!」

リコとハナの気持ちを余所に、噂好きの同僚たちは、リコと慎也の関係を勝手に想像して盛り上がった。


同僚たちの無責任な態度に、リコは遂に堪忍袋の尾が切れてしまった。



バン!と勢い良く両手で机を叩きつけて立ち上がった。


「ちょっと、休憩して来ます…!」

リコはやや声を震わせて、今にも爆発しそうな怒りを必死で押さえながら、足早にオフィスを出て行った。


「リコ!」

ハナはそう叫んでから、質問攻めにした同僚たちをキッと睨んで、リコの後を追った。





リコは会社の最上階にある、会議室が並ぶフロアに行った。


今日はこれという大きな会議もなく、フロアは閑散としていた。



フロアの奥の隅の窓辺に向かって、リコは顔を伏せて泣いていた。



「リコ……」

ハナにはリコの気持ちが痛いほど分かっていたので、どう声をかけていいか分からなかった。




ハナは静かにリコの傍に来た。

そして、肩に手を置くと、優しくリコを引き寄せて、抱きしめた。



「慎也さんみたいにって訳にはいかないだろうけど……」

だが、リコの泣いている姿を見て、ハナは放っておくことが出来なかった。



リコは涙に濡れた顔を、ハナの肩に埋めた。



「二人で一緒に泣こう、ううん、一緒に泣かせて……」

リコを抱きしめるハナの目にも涙が滲んでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ