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RISKY―傷だらけの十字架―  作者: 桜井敦子
55/110

54.喪失 その1

慎也の失踪から数日が経った。



リコも近藤も慎也のことが気掛かりで仕事がなかなか手に付かなかった。



あれから近藤とリコは頻繁にお互い連絡を取り合っているが、慎也に関する有力情報は未だ得られていなかった。




土日はバイク屋の営業再開の準備のために、リコも仕事に出ている。



今となっては慎也とここで痴話喧嘩になったことも懐かしく感じられてしまう。


近藤は高校時代から慎也と離れたことがないので、想いは人一倍だった。



「チキショー、あのバカ何処行ったんだよ!」



近藤はその場にあった一斗缶を思い切り蹴飛ばした。


背後から心配そうに見るリコに気が付き、はっと我に返った近藤は、気まずい顔をした。



「ゴメン、こんなトコ見せちゃって…」

近藤の言葉にリコは首を振った。


「近藤くんが辛い気持ち、私にも分かる…」

リコも辛いのは同じ筈なのに。

近藤は自分のしたことを恥ずかしく思った。


「そうだよな…」

そう言うと、近藤は蹴飛ばした一斗缶を元の場所へ戻した。


「今は、シンの為にも、俺がリコちゃんを支えてやらなきゃいけないのにな」

リコは近藤のそんな気持ちがとても嬉しかった。



「それより、ちょっと休まねえ?リコちゃん来てから全然休んでないでしょ?」「うん」



近藤は店外にある自販機からリコに飲み物を一つおごってくれた。



「ありがとう」

嬉しそうに言うリコの表情を見ると、慎也がリコに惚れる気持ちも分かる気がした。


「何かシンがリコちゃん好きになった気持ち分かる気がするな」

「え?」

「シンがいなかったら、俺がリコちゃんとってたかもな」

近藤はちょっぴり照れくさそうに言った。

その言葉にリコは思わず頬を赤らめた。



店の奥の従業員用休憩室のソファーに座って、誰かがつけっぱなしのテレビを見た。



ニュースの時間らしく、今日も政治や事件の話題が尽きない。



『次のニュースです。神奈川県の大手建設会社、尾藤建設は今日、新しい社長に前社長の息子である慎也氏の就任を決め、今朝記者会見が――』


ニュースの内容にリコも近藤も目を疑った。

「え?…」



『慎也氏は25歳、異例の若さでの社長就任となり、業界の経験はそれほどありませんが、前社長の真一郎氏は慎也氏に多大な期待を寄せており――』

説明と共に映し出された顔写真は眼鏡に少しやつれた感じはするものの、間違いなく、二人のよく知る慎也だった。




「なんで…」

リコはショックでペットボトルを持つ手が震えた。


「…」

近藤は怒りを抑えて、膝の上で強く拳を握りしめた。


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