50.暗転 その6
「仙崎達にシンが拘る本当の理由って俺にも分かんないんだけどさ。でも、ひとつだけはっきりしてることはあるんだ」
「それって?」
リコが聞くと、近藤はコーヒーを一口飲んだ。
「アイツはとにかく寂しいんだよ」
そう言って近藤は暗くなった窓の外を見た。
「唯一の身内の親父さんともあんな状態だし。良く考えれば、アイツには頼れる奴が誰もいない。実は天涯孤独なんだよな…」
「そう言えば、そうかも…」
リコも近藤の言葉は否定しなかった。
そう言えば、彼自身のことって余り知らなかったとリコは思った。
最も、聞いてもはぐらかされていたかもしれない。
「今日呼び出したのは、リコちゃんに頼みがあるからなんだ」
「私に?」
近藤は更にコーヒーを飲むと、リコに真顔で向き直った。
「アイツ、シンの傍に居てやって欲しいんだ」
「…」
近藤は真剣な眼差しでリコを見つめた。
リコは近藤の言葉に重さを改めて感じていた。
「俺は親友だけど、最後のところまでは踏み込んでいけない。だけど、リコちゃんがシンと一緒に居てくれるなら…、アイツの本当の心の奥底まで入っていけるのはリコちゃんだけだなんだよ」
「近藤くん…」
リコの目からは知らずに涙が溢れて来た。
「あ、ご、ゴメン!泣かすつもりじゃ!」
「ううん、違うの」
慌てる近藤にリコは鼻をすすりながら答えた。
彼を愛したい…。
その想いが、今リコの中で彼を守り受け止めたい気持ちへと変わって行った。
この愛は、リコの想像以上に重たいものになるかも知れない。
「私なんかで、良いの?」「リコちゃんじゃなきゃダメなんだ」
近藤は強い調子で言った。
「付き合い始めてアイツが俺に言ってたことだけど、『リコには自分の全てを渡してもいい』って…」
慎也がそんなことを言っていたなんて…。
「分かりました。近藤くん、ありがとう…」
リコは涙を滲ませながら、近藤に礼を言った。
慎也は自分を信頼してくれていたんだ。
何となくの気持ちが、リコの中で確信に変わって行った。




