49.暗転 その5〜慎也の過去〜
――アイツ…シンはもともと、あんな仙崎みたいな危険な野郎とつるむような奴じゃなかったんだ…。
アイツんち家庭の事情が複雑なんだよ。
親父ってのが、尾藤建設って神奈川県のローカルゼネコンの社長なんだけど、中学の頃に離婚してさ。
シンは親父の方へ一方的に引き取られたらしい。
お袋さんはよく知らないけど、確かモデル出身の女優かなんかだったらしい。
まあ、余計なこと言うけど、モテたのだけは否定しないけどさ。
最初高1で会った時は、女がやたらウワサしてたから、ルックスにハナかけたチャラ男だって思ってた。
けど特定の女子がいなかったのは、ヤツがガラの悪い野郎とつるむことが多かったからだろうな。
いづれにしても、初対面はいい印象なかったのは事実だから。
俺はもともと純粋にモトクロスが好きだったけど、シンのは単なる族野郎で、バイクの扱いも下手くそそのものだったしな。
はじめてシンと話したのは、学校でシンが何かの腹いせに俺のバイクを蹴ったことだったんだ。
その時、俺はメチャメチャ怒ってアイツを一発殴った。
「てめえの族車と一緒にすんな!」てさ。
これでコイツは敵になったって思ったら、次の日になって謝ってきてさ。
それで俺は「コイツ意外とまっとうかも」って思った。
それから、時々二人でつるむようになったんだけど。
まあ、最初はアイツの無知には呆れまくりで、俺がいろいろマトモなことを教えてやったんだよな。
でも俺といる時だけは、本当にバイク大好きの普通の奴って感じだった。
それと、今でもだけど、ルックスは全然ハナにかけない奴なんだよな。
何て言うか、付き合ってるうちに純粋なヤツなんだなって分かって来た。
それでもシンは、仙崎達との付き合いは切ろうとはしなかった。
ヤツらとつるむのは親父への復讐だみたいなこと言ってたけど。
今思えば、もっとはっきり奴らと決別させておけば良かったのかもな…。




