47.暗転 その3
いつもの見慣れた店内は見る影もなく、滅茶苦茶に破壊されてしまった。
警察による現場検証や当事者への事情聴取、救急車のサイレンの音、何もかも日常とは変わってしまった。
慎也はガラスの破片が刺さったため、病院で手当てを受けたが、その後、リコや近藤も含めて事情聴取に慌ただしかった。
Tシャツは背中が血だらけになったため、背格好がほぼ同じ近藤のジャージを借りた。
顔にも切り傷を数ヶ所つくり、ジャージの前を開けたところからは包帯が痛々しくのぞいていた。
当然のことながら、店はしばらく営業停止にならざるを得なかった。
ようやく警察による検証が済んだ後、店長が慎也を呼んだ。
「申し訳ないが、お前は今日限りで解雇させてもらう…」
慎也は驚いた目をしたが、それ以上のリアクションをしなかった。
店長の言葉を聞いた近藤とリコは驚いた。
「何でですか!?」
「そうですよ!シンは仕事だって出来たし、取引先とかお客さんの評判だって良かったじゃないですか!ウチにはなくちゃならない存在でしょう!」
二人は信じらんないという口調で叫んだ。
「確かに、ウチでの尾藤の存在は大きい。だが、横浜統轄本部からの通達だ。尾藤が暴力団とつながりがあると判明した以上、うちとしては雇い続ける訳にはいかないんだ」
「そんな…」
リコは信じらんないという顔をした。
「暴力団とのつながりってそんなの昔の話じゃねえっすか!現にシンは構成員でも何でも…」
「やめろよ、コン!」
慎也が二人の話に口を挟んで来た。
「仙崎とコンタクトがあったのは、事実だから…」
慎也は目を伏せ、拳を握りしめた。
「お騒がせして、申し訳ありません。今までありがとうございました」
慎也は店長に向かって深々と、きちんとした挨拶をした。
リコは、慎也にどう声をかけて良いか分からなかった。
自分の愛する男が、暴力団とつながりがあった。
出来るなら嘘だと言って欲しい。
だが、出会った頃言われたことをリコは思い出した。
『俺には関わらないでくれ』
『高校時代からケンカが強くて有名』
そう言われながらも、自分は慎也に近づいた。
彼を選んだのは、私の選択だった…。
私は、彼に何かしてあげなくては…。
「慎…也…」
先ほどからうつむいて喋らない慎也に話しかけた。
だが、慎也は消沈して反応を示さなかった。
リコはそんな慎也の手を取った。
「あたしは、慎也から離れないから…」
そう言うと、取った手を強く握りしめた。
「これからもずっといるから…」
リコは握りしめた手を、更に自分の顔へ持って行き、祈るようにうつむいた。
慎也は僅かに反応してリコの方を見た。
そして弱々しくリコの手を握り返した。




