45.暗転 その1
バイクにトラブルがあった日は、何故だか悪いことが起こる慎也だった。
しかし、リコには、タイヤのトラブルの時に、一樹と会ったことは言えなかった。
慎也はふぅっと息をつき、考え過ぎだ、と首を振り気持ちを切り替えた。
何度目かのエンジン始動でようやくエンジンがかかり、ホッと一安心する。
急いで仕事場へ向かわなくては…。
警察車両に捕まらないように気にしながらも、慎也ははやる気持ちから、スピードを上げて仕事場へ向かった。
背中にリコの身体の感触がないのが、最近寂しく感じてしまう。
今度からはシフト時間を調整して一緒に通勤出来ないか、などと考えながら走行していた。
その時――
数台の車が、慎也のバイクを取り囲むように近づいてきた。
この間の仙崎の乗る高級車とは違うが、3ナンバーに改造がかかっている。
慎也は状況を察知し、スロットルを捻り、車を振り切ろうとした。
1300はあっという間に加速が利くので、あっさり振り切ることに成功した。
しかし、車も執拗に着いて来る。
もう一台の車が先回りをしてバイクを挟み撃ち状態にし、次第に間隔を詰めようとする。
慎也はどうにか入り込めないか脇道を探すが、タイミング悪く出てこない。
「尾藤!てめえぶっ殺す!」
車の一台の後部座席のスモークのウインドウが開き、金髪に金ぶちのサングラスをした男が怒鳴り声をあげた。
「関係ねえっての!」
慎也も捨て台詞を浴びせ、振り切ろうとする。
車両のリアには興和会の大門と日章旗のステッカーがあった。
興和会に籍を置きながらも、いわゆる旧車會にも族している、慎也や近藤から見ればいわゆる「雑魚集団」であった。
(旧車會のクセに1300《コイツ》に着いてくるなんて、いい度胸じゃねえか!)
慎也の愛車1300は車重は約300kgと重いが、扱いは良い。だが、大型二輪免許を持っているからと言って、気合い程度で乗りこなせる車両ではない。
圧倒的な加速力を誇る1300を駆る慎也はライダーとして、それなりの自負心はある。
だが今はそれどころではない。
形勢不利と見たのか、後部座席のいかついサングラスの男は、車窓に箱乗りになると、いきなり慎也に飛び付いてきた。
慎也はバイクから押し出され、バランスを崩した1300は数十メートル先へ飛んで行った。
男と慎也はもみ合う形で倒れこんだ。
刃物を持って男が慎也に襲いかかってくる。
慎也の眉間すれすれで刃をかわした。
刃物を持つ腕を押さえ込むとみぞおちに一発蹴りを食らわした。
車から降りた連中も次々に慎也に襲いかかってきた。
だが、そこは過去にケンカで負けたことのない慎也。襲いかかる連中をどうにか一人で片付けた。
パトカーのサイレンが聞こえて来たので、慎也はその場を離れた。




