41.至福 その4
リコにとっては、まだ慎也との付き合いは手放しでは喜べなかった。
一樹とのことが全然精算出来ていなかったからである。
一度一樹と会って、ちゃんと別れると言わなくては。
だが、すんなり受け入れてくれるだろうか?
そういうことを考えながら、リコは右手薬指に光るリングを見つめた。
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リコは昨日の慎也とのデートで、沢田とのこれまでのことを出来るだけ告白した。
慎也は咎め立てはしなかった。
『どうもヤツは、リコに相当入れ揚げてるみてえだな』
『そうかも…』
『沢田との件は長期線になるかも知れないな』
リコはそれが不安だった。
『ごめん…』
『お前が謝ることねえよ』
『アイツは、お前が俺と出会う前から知り合っていたんだから』
『……』
『このことはリコ一人背負うことねえから。俺も協力する』
慎也がそう言ってくれたのは、本当にリコにとって救いだった。
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『取り敢えずヤツから電話があったら俺に教えて』
慎也からはそう言われた。
「わっ作ったの?ペアリング?」
リコの指輪を見て、ハナが早速声をかけて来た。
「うん、この間一緒に」
「フフッ、ラブラブじゃーん」
ハナが興味津々に言った。
「デートと電話とチューも、あれからしてんの?」
「そうだけど、あんまりこの場で言わないで」
まだ始業前の比較的静かな時間のオフィスである。
そんな恥ずかしがるリコが面白いのか、ハナはリコの耳に囁いた。
「エッチはしたの?」
それを聞いて、リコは顔中真っ赤になってしまった。
「な、何言ってんの!まだ付き合って一週間ちょっとでしょ…!」
「一週間も付き合えばそろそろって気じゃないの?」ハナは両腕を組んで、リコに説教でもするかのようだった。
「高校生ならいざ知らず、二人共ハタチを過ぎた立派な大人でしょ?」
「まあ…」
「そろそろ向こうは我慢出来なくなってんじゃないの?」
「うーん…」
リコは悩んだ。
男は、慎也は、やはりそうなんだろうか?
でも、相手が男である以上、確かめたら多分即座に「したい」と言うに決まっている。
『ウソ、させてくれるの?俺、もう我慢出来ねえ!』
慎也がなんて言うかをリコは勝手に妄想して恥ずかしくなってしまった。
もう少し慎也に気持ちを確かめるのは後にしようと、リコは決めた。




