38.至福 その1
翌日の朝、リコはいつものオフィス街の職場へ向かった。
「おはようございます」
リコがいつものように、職場の人に挨拶すると、ツカツカと、ハナがリコの前にやって来た。
じっと自分を見つめるハナに、リコは状況を理解し、冷や汗が出た。
「ハナちゃんにはいつか話つもりでいたんだ」
リコとハナは人気のない裏階段の隅に言った。
「ホントにゴメン」
リコは謝った。
「え?」
ハナはキョトンとした。
「だって、沢田さんはハナちゃんが紹介してくれた相手だし、申し訳ないって思って」
ハナはプッと吹き出し、クスクス笑った。
「やだあ!そんなこと気にしてたの?」
ハナの意外な反応にリコはキョトンとした。
「昨日彼がバイクで来た時のリコの顔、幸せそうだったなあ…」
ハナは腕を組みながら遠くを見つめ、昨日のリコを思い出しながら言った。
みんなハナにお見通しだったことに、リコは恥ずかしくなった。
「いろいろ聞かせてもらおうじゃないの」
ハナは恥ずかしがるリコの顔を覗き込んだ。
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「じゃあ、彼とはお付き合いすることになったんだね」
会社のカフェテリアのテーブルで、自販機のドリンクを飲みながら、リコはこれまでの慎也とのいきさつを話した。
「それにしても、アンタの彼氏になった尾藤って人?アタシから見ても超イケメンだったなー」
ハナは一瞬だけみた慎也の顔を思い出しながらうっとりした。
「ちょっと」
リコは妄想に浸るハナにムッとした。
「ごめん、大丈夫だよ、横取りしたりなんかしないから!」
本気で起こるリコに慌ててハナは弁明した。
「当たり前でしょ!ハナの方がスタイル良いんだから!」
リコは巨乳ナイスバディのハナにとられまいかと心配になった。
「それで?彼とは毎日電話って約束になったんだ?」
本格的に付き合うということになって、実はリコは慎也にいろいろノルマを課せられていた。
まず、基本は毎日電話で話す。そして必ず一度は「愛してる」と言うこと。
そして、会えた時は必ず一度はチューをすること。
ハナはそれを聞いてちょっと引き気味になってしまったようだった。
「け…結構縛るんだね…あの人。アタシはちょっとストーカーチックで苦手だなあ…」
ハナは思わず引いてしまったようだった。
「あはは」
リコも思わず苦笑いをした。
しかし、リコにしてみれば、それだけ慎也が自分を愛してくれているのは間違いないことだった。
そんな彼の縛り付けが、むしろリコには可愛く思えて仕方なかった。




