表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RISKY―傷だらけの十字架―  作者: 桜井敦子
34/110

33.ためらい その4

週明けの月曜日。


今日は慎也のバイクの調子が珍しく少々悪い。




出勤途中、バイクの走行時に異常音がしていた。



休憩時間中は、店の裏に止めてあるバイクをしらべながら、慎也はずっと首を傾げていた。



「直りそう?」心配して近藤が近づいて来た。

「エンジンとかタイヤに異物ないか見たけど分かんねえ…」

「オイルとかじゃねえ?」「そんなに乗ってねえんだけどな」

まだ昨年購入したばかりなので、今ダメになったら本当に困る。



仕事柄、エンジンなど部品はある程度いじれる慎也だが、さすがに今回は部品そのものの問題のようでお手上げだった。


仕方なく、整備士のいるディーラーに預けることにして、慎也にしては珍しく徒歩で帰った。



代車を勧められたが、自分の愛車でないと、ポジションが合わず、乗り心地が何となく悪いので断った。




アパート迄は歩いて帰れる距離だったし、だいたい男一人夜道を歩いたところで問題があるワケがない。




夜、その帰り道…。


「尾藤慎也くんだね?」

聞き覚えのない、クリアな声が慎也を呼び止めた。



少し暗くなったところで顔は分からない。



「どちらさん?」

慎也は少し警戒するように尋ねた。




「『サワダカズキ』ってリコくんに聞けば分かるよ」

リコの名前に、慎也の目が少しだけ大きくなった。




『サワダカズキ』?


慎也にとっては一樹は初対面だった。




一樹は、明かりのあるところに一歩踏み出して、慎也の前に顔を表した。




慎也の、Tシャツにカーゴパンツというラフなスタイルとは全く違い、良品質の白い半袖シャツにネクタイを締め、ベージュのベストに着崩さないスラックスという一樹。


一見するとおぼっちゃま学校の男子高校生に見えなくもない。




「キミは確か、高校時代は良く名前の知られた不良だったそうだね。暴走族のリーダーの経験もあり、暴力団興和会の仙崎はもと相棒だとか…」

「ずいぶん俺のこと調べてんじゃねえかよ?」

慎也はふっと、ため息をつき、不快そうに一樹を見つめた。




「リコとはどういう関係なんだ?」

慎也は咎めるように聞いた。




「そうだね…。僕は彼女のフィアンセ候補とでも言うべきかな?」

一樹の言葉に、慎也の眉が少し動いた。



「フィアンセ?」

「キミは彼女をねらっているの」

正面から慎也を見つめつつ、一樹は尋ねた。




「リコは、俺にとって大切な存在だ。ねらってるとかそんなヤラシイ考えなんかじゃねえ」慎也は身体を横に向けながら言った。

「彼女には伝わっていないけど」




それを聞いて一樹はクスっと余裕の笑みを浮かべた。「じゃあ、所詮片想いなんだね」

ややバカにするような口調の一樹を、慎也は横目で睨んだ。




「言っとくけど、僕は彼女に決めたんだ。リコくんから手を引いてくれないかな?」


一樹の勝手な物言いに、慎也は憤った。

「そんなことはリコが決めることだろ!」

慎也はやや声を荒げて言った。




「リコに何かしたら許さねえからな!」




しかし、一樹は尚も余裕の笑みを浮かべた。



「まあ、後のお楽しみだね。いづれ、キミは彼女から手を引くんだから…」


そう言い残すと、一樹は脇に止めてあった自分の白い高級車に乗り込み、その場を去って行った。




なんなんだあの野郎と思いながら、残された慎也は去って行った車をいつまでも睨み続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ