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32.ためらい その3
翌日のお昼ちょっと前に、一樹はリコの自宅前のマンションまで車で迎えに来た。
ランチでもドレスコードの指定があるからと、まず
横浜のデパートで正装用のドレスと靴、小物を購入し、ヘアメイクセットまでした。
もちろん全て一樹が出してくれた。
「よく似合ってるよ」
全身姿見に映るリコを見て一樹は言った。
「すごい、本当にいいの?」
「もちろんだよ」
クリーム色を基調とした、ふわりとした膝丈のドレスは、リコに本当によくお似合いだった。
一樹と来たのは、高級ホテルのランチと、夜はマリンルージュのディナークルーズだった。
双方ともコースの最高級のものが出て来た。
普段の自分の給料なら絶対に手が出ないものばかりだった。
なにもかもが至れり尽くせり。
リコには本当に夢のようだった。
「なんだか、私、お姫様みたい」
リコは照れながら言った。
「本当にお姫様だよ」
一樹はリコを真顔で見つめた。
「僕だけのね」
一樹は微笑んだ。
無邪気に微笑む一樹を目の前に、慎也とのことはとても言えなかった。
(誰にも渡さないよ…)
一樹は船の窓から映る夜景を眺めながら、心の中で思った。




