29.謀略 その6
翌日。
朝、慎也と近藤が顔を合わせると、近藤は疑い深そうに慎也を見た。
「シン、昨日は何があったんだよ?」
近藤は何となく推測がついていた。
慎也は近藤と視線を合わせようとしなかった。
そんな慎也を近藤は不安げに見つめた。
数時間後、慎也の仕事中に携帯が鳴った。
着信元を見るなり、慎也は店の裏へ人目を避けるように回った。
『第三倉庫まで来い。いいもの見せてやる。』
電話の主は仙崎だった。
「俺、ちょっと外出てくる」
そういうと、慎也はバイクにまたがり、店を飛び出した。
国道を真っ直ぐひた走り、言われた場所にたどり着いた。
倉庫の中に行くと、慎也は思わず目を疑った。
ユウジ達、慎也の後輩二人は見るも無残な姿になっていた。
腕を両脇から鎖で吊され、身体中傷だらけになり、死んだようになっていた。
「ユウジ!!」
慎也は思わず叫んだ。
「よく見ておけ。これが興和会のやり方だ」
そう言い放ったのは仙崎だった。
仙崎は組の仲間数人を背後に連れていた。
「てめえの忠告にうちが素直に『はい、そうですか』とでも言うと思ってたか」仙崎は口の端を歪めて笑った。
「慎也、いつまでも逃げ切れると思うなよ」
慎也は仙崎を睨み付けた。
そんな慎也の顔の前に、仙崎は柄の部分に装飾の入った、愛用の鋭いナイフを突き付けた。一瞬やや驚いた表情をした。
「次はてめえの番だ」
ナイフを目の前に突き付けられたまま、慎也は仙崎を睨んだ。
謀略―了―




