2.出会い その1
本城莉子は中堅企業の事務職のごく普通のOLだった。
毎日パソコンを目の前に頼まれた書類の作成や電話応対、流行やファッションには人並みに敏感だが、これと言って取り柄もなかった。
社内では呼びやすいこともあってそのままリコと呼ばれいる。
学卒入社だが、特に将来のビジョンもないため、この就職難の時代にたまたま採用をもらった中堅企業の事務職に就職したのである。
現在は入社も3年目。25歳は今の世の中全く結婚に慌てる歳でもない。
しかし、やはり好い人がいればお付き合いは、とは思っている。
しかし、社内にはなかなかピンとくる男性はおらず、たまたまいても彼女持ちだったり、既に結婚していたりして、現実は上手くいかないものである。
先日も、良く書類を頼んでくれる男性社員の一人に人知れず思いを寄せていたリコだったが、彼女がいるのを知り、落ち込んでいるところだった。
パソコンを前にため息をつくリコの前に、同じ事務職の同僚、中村ハナが声をかけて来た。
「また、片想い?」
少しからかうようにハナが言うと、リコは少しムッとした。
「別に、いつものことだけど」
「ついてないよねえ、花盛りの女性が二人もいるのに、男っけゼロなんてさ」
「別に今の世の中珍しいことじゃないし」
リコは軽く流して、横から中年の上司に頼まれた書類の下書きを、清書しようとした。
「あのさ、ものは相談だけど、今度合コン行く?」
「合コン?」
久しぶりにそんな話を聞いた気がした。
「それも、タダの合コンじゃないんだよ。向こうにはIT企業の若社長もいるんだって」
リコの胸は久しぶりに期待に高鳴る思いがした。