28.謀略 その5
慎也は国道をバイクでひた走り、自分が仙崎に指定した待ち合わせ場所へと向かった。
数時間前。
「珍しいじゃねえか。お前から電話よこすなんて」
仙崎は興味深そうに言った。
「ようやく気が変わったか?」
「お前にどうしても言いたいことがある。11時に時田町のバイパス高架下まで来い」
そういうと、慎也は携帯を一方的に切った。
先に現場に到着したのは慎也の方だった。
ヘルメットをとると、サングラスをかけ、バイクは道の隅に止めた。
昔のワルだったころの自分にその瞬間戻る。
『仙崎とは関わるなよ』
近藤の忠告を思い出した。
口には出さないが、近藤には済まない気持ちだった。
だが、自分を慕い懇願する後輩を黙って見過ごすことは出来なかった。
『慎也先輩しかいないんすよ』
風が舞い上がり、乾燥した砂を巻き上げた。
慎也の長い前髪が風に揺れる。
慎也のいる現場の前に黒い車が横付けされた。
スモークガラスの運転席から、同じくサングラスをかけた仙崎が降りてきた。
慎也もサングラスのまま仙崎の方を向いた。
乾いた砂が風に舞い上がる。
「お前からわざわざ呼び出すなんてどういう了見だ?」
仙崎が興味深げに聞いた。
「ユウジたちから手を引け」
慎也は端的に、ややドスの聞いた低い声で言った。
「手を引く?」
サングラスの奥から眉をひそめて尋ねた。
「アイツらは脱法ドラッグに手を出して、お前が目を付けてたらしいな」
「今や脱法も結構警察が網を張り出してるからな。覚醒剤よりまだ取り締まりの緩いうちに確保しないとな」
「ユウジたちは足を洗いたいって言ってる」
仙崎は、それがどうしたと言わんばかりに鼻を鳴らした
「アイツらを解放してやってくれ」
慎也はかけていたサングラスを外しながら言った。
「カタギになりたい奴らは、お前には要はないはずだ」
また砂が舞い上がる。
仙崎はサングラスの奥から無表情で慎也を見つめている。
仙崎は車に乗り込み、現場を離れた。
「甘いんだよ、尾藤」
運転をしながら仙崎がつぶやいた。




