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RISKY―傷だらけの十字架―  作者: 桜井敦子
22/110

21.幸福 その3

二人が向かったのは、湘南方面の海岸だった。



二人の住む横浜からも程近いというのもある。




海辺の国道134号線を、慎也のバイクはひたすら真っ直ぐ走った。




左側に松林の防砂林を臨みながら、心地よい海風が吹いている。




沢田とでは味わえない、開放的な空気をリコは感じていた。



慎也の背中のぬくもりを感じながらの幸福な瞬間。



しかし、これはデートのうちに入るのだろうか?



今は単なる男友達と遊びに行くというのが正しくのかもしれない。




でも、リコにはそれでも十分だった。



沢田のことが時々頭をよぎるが、今は目の前のことを楽しもうと決めた。



まず、お昼にしようということになり、二人は海の見える創作系の多国籍レストランに取り敢えず入った。




「何にしようかな」とメニューを探していると、激辛メニューが目に飛び込んできた。




「お好みの辛さが選べるって」激辛メニューに見入っているのは慎也だった。




「スミマセン、この激辛チャーハンの一番辛い奴」慎也は店員に注文した。




「え?本気で食べるの!?」

「平気、大したことないよ」

心配するリコをよそに、慎也は平然と言って見せた。



「お待たせしました」

慎也に運ばれて来たのは、真っ赤ないかにも辛そうなチャーハンだった。



一方リコは地上げの魚介類のトマトソースパスタにバーニャカウダーを添えたノーマルなメニューだった。



「いただきます」

リコは自分のを食べながら、激辛の慎也が心配だった。




「ホントに大丈夫?」

「別に、俺にはこのくらい普通だよ」

そう言って平然とした顔で食べ始めた。




次の瞬間、

慎也は口元を押さえてブッと吹き出してしまった。



「尾藤くん?」

呆気にとられるリコを目の前に慎也は咳き込んでしまった。



「水水!」

そう訴えて、コップの水をあっという間に飲み干してしまった。



慎也の顔は真っ赤になって、目は思い切り涙目だったので、リコは思わず吹き出してしまった。



「笑うなよ」

水を飲みながら涙目になってリコを見る慎也が妙におかしかった。




「だって自分から頼んだんでしょ!」

リコは可笑しくて笑いが止まらなかった。



そんなリコをうらめしそうに慎也は見つめた。




いつもは、どちらかというとクールな印象の慎也だっただけに、このギャップはたまらなく可笑しかった。


慎也はカッコつけたつもりが、思い切り無様な姿をさらすことになってしまった。






「ごちそうさま」

「ありがとうございました。お客様、大丈夫ですか?」


晴れやかな店員の顔とリコとは対照的に、慎也はグッタリしていた。



その様子がまた可笑しくてたまらなかった。




「大丈夫?でも結局みんな食べたよね」

「ああ…」

慎也は顔を真っ赤にして余裕をなくしていた。




「アイスでも食わねえ?」身体を冷やしたくて慎也は思わず提案した。




先ほどの店から歩いてすぐのところに人気の濃厚ソフトクリームのお店を、スマホ検索で見つけた。




抹茶やチョコ、バニラ、イチゴが選べるが、リコはイチゴとバニラのミックスをオーダーした。


すると、

「俺も一緒で」と慎也が言って来た。




「え?イチゴだよ?」

「いけないのかよ?」

慎也のイメージからすると意外でリコは思わず聞いてしまった。




「あーうめえ」

我を忘れてソフトクリームを食べる慎也は、もはやカッコつけはどこかに行ってしまった。




リコは、慎也の意外な素顔がただただ、楽しくて仕方なかった。




「食わねえの?解けちゃうぞ」

「う、うん」

思わず見とれてリコははっと我に返った。




「イチゴ味、美味しい」

リコはちょっとからかって聞いてみた。



「うん、俺結構イチゴ好きなんだよね」

嬉しそうにイチゴのソフトを食べる慎也がいとおしく思えた。




ますます慎也に惹かれて行きそうなリコだった。




慎也が食べ終わる頃、リコのはまだ半分くらい残っていた。



「遅っ、俺半分手伝おうか?」

そう言って顔を近付けて来た慎也の意図を、リコはようやく理解した。




「だ、ダメ!」

慌ててソフトを自分の方に引っ込めた。




まだ、間接キスをする間柄ではないのに。




「今のは冗談だって」

「もう!」

「さっき笑った仕返し」

慎也はイタズラっぽく笑った。



「なんだ」

冗談と聞いて、内心半ばホッとしつつも半ばガッカリしたリコだった。



(そうよ!これはデートじゃないんだから!)

リコはとにかく自分に言い聞かせた。




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