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1.―序章―
まだ夜にならないのに、薄暗い倉庫の中――。
俺は薄れかけた意識の中で奴らの、自分への容赦ない罵声を聞いた。
既に顔と身体には無数の傷が出来て、自分で立ち上がる気力は残っていなかった。
だが、両側から腕を吊され、それでも尚、奴らは執拗に俺を打ち付ける。
そのたびに身体に激痛が走る。
多分骨が何本か折れているのかも知れない…。
だが、俺には不思議と安堵感があった。
――これで、全てから解放される……――
これは、俺が選んだ運命なんだ。
ただ気掛かりなのは、アイツのこと…。
残酷な出来事を見せられ、彼女が泣き叫ぶ声がぼんやりと聞こえる。
彼女のお腹には、俺の子がいる。
こんな残虐劇を目の前に、お腹の子は無事でいられるだろうか?
そんな事を気にしながら、俺は意識を失った――。