15.悪夢 その3
父親の顔を見るなり、慎也の顔から血の気が引いていった。
「お前の居場所が分からなくなって、ずいぶん探した」
「…」
慎也は固い表情のまま、黙っていた。
「こんな小さなバイク屋で仕事してるのか」
父親は駐車場の向こう側の店舗を見つめて呟いた。
「何の用だ…」
慎也は父親を睨み付けて尋ねた。
「私も長年、この仕事を一人でこなして来た。だが、私もそろそろ第一線を引いた方が良い歳になった」
「…」
慎也は父親と視線を合わそうとはしなかった。
「それに、お前ももう、25だ。私の跡取りとして、そろそろうちで実績を積み始めてもいい頃だろう…」
「ヤクザに汚れた会社でか?」
慎也の冷たい問いかけに、父親は続けた。
「建設不況と言われる今の時代に、生き残りがかかっている。お前にはまだその厳しさが分からないだけだ。慎也、私はお前にこの会社を残してやりたいのだ。」
「それで、アンタはお袋と俺と妹をないがしろにしたんだろ?」
「慎也」
「仕事を理由にろくに家に帰らねえで…だから、お袋は妹を連れて出て行った…!だけど、お袋との離婚届けでは、勝手にアンタが俺の親権者になった!」
「慎也、私にはお前がどうしても…」
「俺はアンタを一生許さねえ!」
慎也は吐き捨てるように言った。
店の入り口で仕事をしていたリコは、慎也が戻って来たのに気が付いた。
「シン…」
慎也はリコに気が付いたが、そのまま何も言わずに行ってしまった。
リコも慎也の顔色が悪いのに気が付き、それ以上は声をかけられなかった。
(何か、あったのかな…)
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「お疲れ様ー」
今日も遅くまで続いた仕事が、どうにか終わった。
だが、いつも閉店間際までいる慎也の姿がなかった。
「あれ?シンちゃんは?」リコはそばにいた近藤に尋ねた。
「ああ、何かシンの奴、具合悪いって夕方頃帰ったよ」
「何かあったのかな?」
「さあな…」
二人は心配そうに店の中にあるCB1300SFのポスターを眺めた。




