14.悪夢 その2
「参ったよ、先方の方で納品間違えられた」
慎也が納品伝票を片手にため息をついて戻って来た。
「この間の業者だよな?あそこミス多いよな」
近藤が慎也の伝票を見ながら答えた。
リコはアルバイトなので、会話の内容にはついていけなかった。
「何か間違えがあったの?」
バカにされるかな?と思ったが、不機嫌そうな慎也が心配になった。
だが、そんな心配は無用だった。
「お客さんがネットで見たバイクをうちで取り寄せることになってさ。こっちから代理店に発注したんだけど、それと違うの持って来られたってワケ」
慎也はバカにしたりせず、丁寧に説明した。
「じゃあ、お客さん困っちゃうわね。お店の信用もかかるし」
そんなリコの返答に、慎也は気持ちがほぐれた。
「ありがと。余計な気ィ遣わせて悪かったな」
慎也は優しく言った。
胸元のクロスがキラリと光った。
彼の気持ちが和らいだようで、リコはホッとした。
店の中にある事務室で、慎也はパソコンで発注リストを確認していた。
そのそばに近藤がやって来た。
「オイ」近藤は慎也のわき腹をつついた。
慎也は思わず過敏に反応して、身をよじった。
「な、何すんだよ?」
「わき腹、敏感ですか?シンヤくん?」
近藤が楽しそうにからかった。
「リコには言うなよ!」
冷や汗をかきながら、慎也は言った。
「そのリコちゃんに何で声かけねえんだよ?」
近藤が横目で慎也を睨みながら尋ねた。
「声かけるって?」
「お前鈍っ!わっかんねえのかよ?リコちゃんはお前とデートしたがってんに決まってんだろ?」
「え?」
「え?ってお前、リコちゃん好きじゃねえのかよ?」「いや、そんなんじゃねえけど…」慎也はしどろもどろに答えた。
もちろん、男として気にならない筈はない。
「そういや、来月日曜日休みとれんだろ?まーお前にその気がないんなら、俺誘っちゃおうかなあ」
近藤が嬉しそうに言った。
「それだけは、ゼッテエ許さねえ!」
慎也は意地になって答えた。
来月の日曜日。
リコとデートか…。
慎也は一人妄想をしてしまった。
「尾藤ちゃん、お客さん来てるぞ」
店長が慎也に声をかけた。「はい」
「第二駐車場の方に来ているらしい」
「第二?」
「ちょっと客の応対行って来る」慎也は片付けをしているリコに声をかけて行った。
「注文したお客さんかな?」
「かな?何でわざわざ第二に来るのか分かんねえけど」
そう言いながら、慎也は一人第二駐車場へ向かった。
駐車場に来ていたのは、慎也の店には場違いな黒塗りの車だった。
だが、今度はアンテナなど明らかな暴力団系の改造車両などではなかった。
どこかの会社のお偉いさんのような高級車であった。
「…」慎也は嫌な胸騒ぎを覚えた。
後部座席から降りて来たのは、50代後半くらいの紳士風の男である。
「久しぶりだな、慎也…」「親父…」慎也の顔が一瞬でこわばった。




