13.悪夢 その1
数週間後。
リコはだいぶバイクショップの仕事にも慣れてきた。
しかし、慎也とリコの関係はと言うと、あまり進展がなかった。
仕事上では、コミュニケーションを取ったりはしているが、なかなかそれ以上のところには踏み込めていない。
だが、リコがプレゼントしたクロスのネックレスは、あれ以来慎也はずっと着けてくれている。
慎也とは距離は縮まらないのに対し、近藤とはかなり仲良くなった。
もともと人懐っこい近藤なので、リコも話しやすいのである。
近藤から、慎也の高校時代の話をいろいろ聞かせてくれた。
高校時代の慎也は名前の知れた不良だったこと、父親と二人暮らしだが、余り仲良くないなど。
「何でか分かんねえけど、シンはあんまり親父のこと話したがらねえんだよな…」
近藤は納車の応対をしている慎也を横目で見ながらリコに言った。
「アイツの親父って実は尾藤建設ってゼネコンの社長らしいんだわ」
「え?ゼネコンの?」
ゼネコンとは建築現場において施工(建物を建てること)を行う会社のことである。
実際の作業はそれぞれ専門業者がやるが、その作業を管理、統括するのが、ゼネコンの仕事である。
「尾藤建設は神奈川県フランチャイズだけど、やり方がキタねえって有名らしくて、噂だと暴力団ともつながりがあるって聞いてたな…」
リコは暴力団と聞いて、少し顔がこわばった。
「あ、でも、アイツはそういうのとは関係ねえからな」
リコの様子に近藤は慌てて弁明をした。
しかし、その近藤も先日慎也が仙崎と会っていたことは話せなかった。
ゼネコン社長の息子、父親との不仲、不良だった過去。
リコにとっては、慎也はまだまだ謎の部分が多かった。




