102.受難 その6
「わあっ綺麗よリコ!」
ウェディングドレスの試着をしたリコにハナは心からの賛辞を送った。
慎也との結婚式を1ヶ月後に控え、リコとハナはウェディングドレスの専門店に来ていた。
白を基調とした店内はいやが上ににも結婚式へのイメージを膨らまさずには居られない。
リコのドレスはオフホワイトではなく、少しクリーム掛かったベルギーレース素材で出来ている。
派手な装飾はないが、全体に細かいフリルと同色の花のモチーフが付いていて、品良くまとまっていた。
そして、忘れていけないのは、妊娠中なのでお腹周りに余裕が必要である。
一方慎也のタキシードは後ろの裾が長くないタイプで色は黒。
スタイリストがリコのウェディングドレスとのバランスを見るために壁に掛かっている。
シンプルなシルエットだが、一応主役なので襟元や蝶ネクタイには同系色の柄が入っていて長身の慎也に合いそうだった。
「早く一緒に歩きたいなあ…」
リコはドレス姿のまま、うっとりと壁に掛けてある慎也のタキシードの腕を取った。
「ハイハイ、ごちそうさま。あー私も早く結婚式あげたいなー」
ハナもまた、慎也の親友の近藤との交際を着々と発展させていた。
「ハナだってすぐじゃない」
「リコ達のが終わったらバッチリ準備しないとね」
「当日は慎也さんの妹さんも来てくれるんでしょ?」「そうなんだって。あと、うちの両親もどうにか許してくれたんだ」
「素敵な結婚式になりそうね」
幸せな女子トークはまさに平和そのものだった。
リコたちの前にはまさに幸せだけが待っている、そんな感じだった。
店の前の通りに不自然な黒い高級車など目に入る筈もなかった。




