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RISKY―傷だらけの十字架―  作者: 桜井敦子
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9.再会〜十字架の過去

慎也は急いでバイクにまたがり、リコが車で走って行った方向を追った。




前を大きく車間をあけて走る若葉マークの軽自動車。

リコの車はすぐに見つかった。




慎也の1300SFは車の間を器用にすり抜けて、あっという間に信号待ちのリコの車に追いついた。




対面は国道なので、待ち時間は長い。




コンコンと、慎也はリコの運転席側の窓を叩いた。




リコは慎也に気がつき、パッと嬉しそうな表情になった。




窓を開けると、

「財布、忘れんなよ」と、慎也がリコの財布を差し出した。




「ゴメン、ありがと!」

リコは申し訳なさそうに礼を言った。




「リコって言うんだな」

「う、うん」初めて慎也に名前を呼んでもらい、リコはドキドキした。


「お前に似合う名前だなって思った…」慎也はヘルメットの奥から目を細めた。



ようやく長かった信号待ちが青に変わり、リコは国道を左折し、慎也は右折して行った。




リコがゆっくり左折を終えた頃には、慎也のバイクは早い加速であっという間に反対方向へ消えて行った。



「ビトウ、シンヤ」

リコは改めて、慎也の名前を口に出してみた。


何故彼のことになると、こんなにウキウキしてしまうのだろう。

リコは幸せな気分だった。



リコとは反対方向に行った慎也もまた、今日のことを思い返していた。




裏表のない素直な性格、そして、ほんの一瞬だが、互いの指先が触れ合ったことや、間近で見た意外とキレイな顔…




「…?」

リコの思いにふけっていると、バイクの背後から、ウインドウをシートで覆った黒塗りの高級車が迫って来ていた。




慎也は胸騒ぎを覚えた。

そして、スロットルを吹かせてバイクのスピードを上げて行った。




案の定ではあるが、黒塗りの車は、同じくスピードを上げて慎也のバイクに付いてきた。




(コイツ…)

慎也はバックミラーに映る高級車をきつく睨み付け、更にバイクを加速させて行った。そして、猛スピードのまま、車と車の間をかわし、再度振り切ろうとする。




しかし、高級車も、一般車両と接触寸前になりながら、慎也の後ろに迫って来た。




これ以上国道でのカーチェイスは、警察の目がヤバイということもあり、比較的車通りの少ない車道へと逸れた。




大通りを逸れると、慎也は更にバイクを加速させた。だが、高級車も他の車を無理矢理かわしながら、慎也のバイクに迫って来る。




そして、車通りが途切れると、高級車はグンと加速し、慎也の前に出ると、横向きに急ハンドルを切り、行く手を阻んだ。



慎也も慌てて急ブレーキをかけ、キキーッとタイヤを横滑りさせた。バイクは高級車にぶつかる寸前のところで止まった。




慎也は車の方を睨み付けた。

「久しぶりだな、慎也」

黒塗りの車から、紫の光沢のある高級スーツを着た、黒いサングラスに茶髪のオールバックの男が降りてきた。



慎也には声の主には聞き覚えがあった。




「仙崎…」慎也は小さく呟いた。




「お前がオレのこと、忘れる筈がねえよな?」

仙崎はサングラスをとると、鋭い目付きで上目遣いに慎也を見た。




「最近雲隠れしやがったから、探すのに苦労したぜ」語る仙崎を慎也は冷たく見つめる。




「まあ、組の網さえあれば、どこに隠れようと、みつけだせるけどな」仙崎は勝ち誇ったように言った。




「俺とお前の昔の仲だろ」「…」

慎也は仙崎から視線を反らした。




「BB…」

仙崎が呟いた。

「…」

慎也がその言葉にわずかに反応した。



「昔、お前についた異名だ…まさか、忘れる訳ねえよな…?」

仙崎は薄笑いを浮かべた。



「『ブラッディ尾藤』…ガキの頃、お前と俺と族でツインヘッドを張ってた時期が懐かしいぜ…その辺のヤンキーからヤクザまで、俺と二人でシメまくったよな…」

仙崎は慎也のそばに周りこんだ。

慎也の表情は冷たく無言のままだった。




「お前の評判はうちの組でもかなりのもんだぜ」

「何が言いてえんだよ?」慎也は吐き捨てるように聞いた。




「組長がお前の力を見込んでるんだよ。もう一度、俺と組まねえか?」

「お断りだ!」

仙崎の言葉に、慎也は声を荒げた。




仙崎はフンと鼻を鳴らした。

「お前のオヤジは、うちの組に仮があるだろ?それに応えるのが礼儀ってもんじやねえのか?」




父親のことを出され、慎也は思わず、反応して声を荒げた。




「親父と俺は関係ねえ!」

仙崎は愉快そうにサディスティックな微笑みを浮かべた。




「まあ、いいさ。けど、いつまでも逃げ切れるもんじやねえからな」

そう言うと、仙崎は勝ち誇ったように、車に乗り去って行った。




慎也は仙崎の去った方を睨み付け、拳を強く握りしめた。





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