第七話 なんだかうまくいったっぽい
なんか作者の予想を超えに越えて行動してくれちゃってます。
ユーリくんのキャラがブレて行きます(もはや別人?)
「おい、メリル?いるんだろう」
メリルの母マリアさんに許可を得て部屋のドアを叩く。だがあきらかにいる気配がするのにいっこうに返事は返ってこない。
(・・・どうしたもんかな)
昨日メリルを訪ねる事を決め、早い方が良いだろうと朝飯をかっ込んですぐに向かった、この世界では時間の概念が元の世界とは違う・・・なんて事は無く(創造主がなんか合わせてくれたらしい)今は午前10時ほど、つまり俺は2時間近く彼女の部屋の前に居た。
(あ〜・・・どうしよう!)
メリルは嘆いていた、あぁ、こんな事ならすぐに家を出て湖にでも行ってるんだった、と。
今、わたしの部屋の前には彼が居る。
「確かに話したかったけど・・・まだ心の準備がッ!?」
『おい、メリル?いるんだろう』
(あぁー・・・どうすればいいのよっ!?)
段々とイライラしてきた。
もういっその事窓から抜け出してしまおうか・・・。そんな考えがふと浮かんだ。
「・・・・・・」
メリルの気配が消えた。窓から出たのかもしれない、そう考え外に回ろうとするとマリアさんに声をかけられた。
「ねぇ、ユーリくん」
基本的に目上の人に対して礼儀を重んじるユーリ。声をかけられると無下にはできない。
(・・・まぁ後から魔力を辿ればいいか)
「なんですか?」
「あのね、あの子の事なんだけど」
あの子とはメリルの事だろう。
「はい、メリルがどうかしましたか?」
聞くと彼女はニッコリと笑って、
「あの子の事、ちゃっちゃとものにしちゃいなさいよ」
「・・・・・・は?」
どうしたのだろうか、俺の耳はどうかしてしまったのだろうか。
なんだかとても母親の言葉とは思えないセリフが聞こえた。
「いやー、きっとあの様子じゃいろいろぶっちゃけちゃったんでしょ?あの子の言葉が嘘じゃないってのは君にもわかるはず、それにね、君以外にあの子を任せたくないのよ、わかる?近場に”こぉんな優良物件”がいるのよ?
娘の気持ちもその人に向いてるなら母親が援護射撃しない理由もないじゃない。君は王都に行くのよね?きっとあの子も着いてくわ。だって私の娘だもの」
”こぉんな優良物件”のところで俺を指差して強調するマリアさん。『私の娘だもの』って・・・そういえばメリルに昔聞いた事があった、なんでもマリアさんは今は亡き夫、ハリスさんを追って王都へ行き(2人ともこの村の出身)、「あなたに守ってもらわなくても私は平気。だからあなたは心配しないで、どこまででも着いてくわ」と啖呵を切ったらしい。
(・・・似た者親子、か。にしても物言いが元の世界の女性っぽいと感じるのは気のせいか?男を『優良物件』って言ったり、援護射撃って表現したりとか)
「・・・わかりましたよ。俺もアイツが嫌いじゃない、ずっと一緒でそういう風に考えた事がありませんでしたが・・・これからは少し考えてみます」
「んふ、お願いね?」
にんまりと笑うマリアさん。そのどこか憎めない笑顔はイタズラをした時のメリルと同じだった。
「はぁ、はぁ、はぁっ!」
結構な距離を走った。湖ではすぐに見つかってしまうかもしれないので、村のはずれの方に来た。
「・・・ここまで来ればいいかな?・・・・・・にしても、あまりこっちには来た事なかったけど」
村の西側のはずれは、狩りをするほどの魔物も居ないし、訓練にもならないので来る必要がない。静かなのだが鬱蒼〈うっそう〉と茂った木々がなんだか不気味で、近づきたくないのだ。
しかし状況が状況。できるだけ長くユーリから隠れていたかった。
「・・・・・・ねぇか?」
「・・・あぁ」
「ん?」
風に乗って人の声が聞こえた気がする。少し辺りを見回すと、小屋があった。
「あれ、こんな所に小屋なんて・・・あぐッ!?」
そこで彼女の意識は途絶えた。
「たっくよー・・・どこまで行ったんだ、アイツ」
メリル宅を後にした俺は、メリルの魔力を辿って歩いていた。
余談だが、ある程度の魔力を持った人間の通ったあとには魔力の気配が残る。
高位の魔法使いは、それを辿る事ができる。
つまりは、今、俺はメリルの気配を追っているわけなんだが・・・。
「・・・もう村はずれに近いぞ?」
「ぉ−ぃ・・・おーい、ユーリくーん?」
「ん?・・・あぁ、親っさんか、どうしたんです?」
武器屋の親っさんが声をかけてきた。こんな田舎村にあるわりにはなかなか良い武器を作っており(鍛冶屋も兼任してる)、その名刀を俺も愛用させてもらってる。
「どうしたじゃないさ、いってぇ何で村はずれの方なんかに。今はやめときな」
「村はずれになんかあるんですか?」
「なんでぇ、知らねーのかぃ?今あそこには賊が住み着いてるらしい」
「・・・はっ!?」
___賊が住み着いてる___って・・・
「・・・っ」
「え、ちょっと!どこいくんだい!?」
気がついたら俺は走り出していた。
「・・・ぅ、ううー?」
背中が冷たかった。それに硬い。声を出そうにもくぐもった声しか出ない。
(なに・・・これ、どういうことよ!?)
「んーっんーっ!!」
「くくっ、お目覚めかァ?」
ニタニタとしながら男が顔を覗き込んでいた。
「にっしてもよぉ、中々上玉じゃねぇかっ」
別の男が最初の男と話してる。
「お嬢ちゃんよぉ、災難だなぁ、こぉんな賊の住処に近づいて・・・どうなるかわかってんのか?」
また別の男が話しかけてくる、今の所3人しか話しかけてこないが、どうやらもっといるようだ。
(・・・7、8人ってところかな?)
「くくっ、なぁ、どうするかって言ってるぜ?」
「食うしかねぇだろ!?」
「ぎゃははっ!ちゃっちゃとヤっちまおうぜ?」
「いいねいいねぇっ久しぶりの女だ」
メリルの予想があたっていたようで7人の男達は口々におぞましい事を言ってる。
「んーっんーんー!!」
「騒ぐんじゃねぇよ!」
「んぐっ!?」
脇腹に鈍い痛みが走った。
「おいおい、あんま痛めつけんじゃねーよ」
「へへっ、じゃあさっそくヤっちまいますか!」
「いいねぇ」
汚らしい手が私に近づいてくる。
(いやぁ!ううっ、・・・ーリ。ユーリぃっ!)
「うーうーっ!」
もうダメだ、そう思ったとき。『彼』だ来た。
全力で走り出した俺は村はずれにさしかかっていた。
(どこだ?どこにいる!?)
そのまま走ると小屋が見えた。中に何人かの気配と、メリルの気配がした。
「そこかァ!!」
怒りのままに無詠唱魔法で壁を打ち破る。
ドガーンッ!!
そのまま小屋の中に入ると、男達がメリルに近寄ってさわろうとするところで固まっていた。
「おい、覚悟は良いか?」
俺は不思議と冷静だった。ただただ俺は、
「どう、殺して欲しい?」
そればかりを考えていた。
「な、なんだおめー!?」
「そ、そうだっ!てめぇよくも・・・」
「はっ!」
鼻で嗤う。
「『よくも』だって?」
そりゃあこっちのセリフだ。
「ハッ・・・嗤っちまうね!」
「んーっんー!」
「あぁ、悪い悪い」
メリルの口を塞いでいた猿次ぐわを取ってやる。
「ぷはっ・・・げほっ・・・ユーリ、なんで」
「その話は後だ、ちょっと下がってろ」
そこまでポカンとこちらを見てた賊共は、人質を堂々と解放された所為か、ハッとしてこちらを睨みつける。
「にいちゃんよぉ、こんなことしてどうなるとぐはっ」
リーダー格っぽい男のセリフは遮られる。俺に殴られた事によって。
「なっ、おい!?」
再びポカンとする賊共。
「さぁて・・・」
「ぶっ殺してやる」
その後、小屋は阿鼻叫喚となった。
「・・・・・・」
気まずそうにしているメリルとともに、賊の武器やら持ち物を持って、帰り道を歩いていた。
あの賊たちにはもしかしたら賞金がかかってるかもしれない。もうすぐ王都へ行くので、その時に鑑定してもらおうと思って回収してきた。
「・・・・・・・・・・・・・・・ねぇ」
「ん、なんだ」
ずっと黙っていたメリルが思い切ったように言葉を発した。俺はちゃんと聞こうと思って姿勢を正した。
「どうして、来てくれたの?」
「・・・」
すぐには答えない。まだ彼女の言葉は続いてる。
「私は・・・私はユーリにとって、なんなんだろう。ただの幼なじみ?
隣の家の女の子?・・・・・・さっきの見てて思ったんだ、私はユーリと王都へ行って、足手まといじゃ、ないかな?」
「・・・」
「私ね、不安なの。きっと私がピンチになったらユーリは助けてくれる。それで君が怪我したら、死んじゃったりしたら嫌なのよ」
立ち止まったメリルの背中が、いつになく真剣で。
(あぁ・・・馬鹿だな、俺)
「好きだよ」
「だって私弱い・・・へ?」
「俺きっとメリルの事好きだよ。だけどさ、俺、浮気性だと思うんだ」
「え、いやちょっと待って!?え、好きって言った?いま」
「あぁ」
「え、ちょどうしよ、えーっ?・・・って、浮気性?」
「あぁ」
自分勝手かもしれないが、「やってやろうじゃないか」と創造主に言った手前、ぶっちゃけハーレムとかやってみたいのだ。
それに優柔不断な正確だし、周りの評価を信じればこの顔はかなり美形らしいし。
「うーん・・・ん〜・・・いいよ?」
「あぁ、やめといた方が良・・・はい?」
え?いいの?アリなの?
「なんて言うかねぇ・・・そんなのは許容範囲っていうか想定内っていうか・・・」
え?そんなに?そんなに俺信用無い?
「だからね、いいの」
「マジで?」
「マジで」
俺の考えてた心配なんて些細な事だったらしい。
そんなこんなでハーレム要員が増えました、まる
決断の日まで・・・いや、出発まであと5日。
もう出発決定しちゃいましたね。
次回出発です