第四話 行くったら行くと聞かないので理由を聞いてみた。
俺は近くの森へ出かけていた。
ザシュッ、ザシュッ。
ただ獲物を狩って行く。近づいてくる魔物の頭を刎ね、落とされたアイテムや金になる素材を回収して行く。
「ぐげげっ・・・人間、俺に勝てない。俺、勝つ」
森の最深部で出てきたのは片言ながら人語を話すゴブリンだった。
「俺は、勝てるんだよ」
吐き捨てて首を刎ねる。
「ぐぎゃああああ!」
「・・・・・・汚らしい死に際だな、お似合いだ」
「ふぅ、ここらで休憩するか」
湖のほとりに座り込み、持ってきた昼食をつまむ。
「おーい、ユーリ?」
「・・・こんな所で何してるんだ?メリル」
前の茂みから幼なじみであるメリルが来た。俺と同じ日に生まれ、隣の家に住む女の子だ。
(まぁ、隣っつっても田舎だから遠いけどな)
「なにって、ユーリが森に行ったって聞いたから」
「だからってなんで来るんだよ」
「そんなの私の勝手でしょ?」
「まぁ、いいけど」
構わず食事を続ける。
「・・・ねぇ」
「どうした?」
いつもの活発的な雰囲気と違って、真剣なメリルの声に驚く。
「もう来週だよ、・・・ユーリはどうするの?」
「なにが?」
「なにがって・・・誕生日だよ、15歳になった翌日、私たちは選ぶんだ。ここに残るか、王都へ行くか」
創造主と話し、両親から王都について聞かされてから2年と少し経ち、ここでの生活は余す所あと1週間となっていた。
「あぁ、それか」
「それかって・・・で?どうなの」
「王都へ行って学院へ入る」
「・・・ユーリは学園で習う様な事はもう習ってるじゃない」
「だけど行くんだ。俺は後々冒険者になる、そのためには仲間が必要だ。
行っていきなり仲間を捜すより、学院で生活して気のあう奴を探す方が良い」
そう言えばちゃんとメリルに話していなかったと思い、今後について話す。
返ってきた彼女の言葉は俺にとって衝撃的だった。
「・・・・・・そう。だったら私も王都へ行って学院に行くわ」
「・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「だから、私もユーリと一緒に行くのよ!」
この幼なじみは何を言っているのだろうか。はっきり言って意味がわからない。
俺の選択に合わせているようにしか思えない。
「なんでだよ?」
「なによ、私がついてっちゃダメなの!?」
「そうは言ってないけど、なんでこんな大事な事をお前は俺に合わせるみたいな形で決めようとするんだよ」
「ッ・・・」
傷ついたような顔をして、こちらを見つめるメリル。
「そんなの、・・・」
躊躇うように間を空けて、黙り込む。そして何かを決心して一気に彼女はしゃべりだした。
「離れたくないからに決まってんでしょうがっ!馬鹿なの!?頭はいいけどあなたって馬鹿でしょ!?
なんで私があなたに合わせるか?どうして大事な事をあなたと同じと言って決めるか?
そんなの好きだから、あなたとッ、ユーリと離れたくないからに決まってるじゃない!
それ以外に何があるってのよ!?だって一度離れたらもう逢えない、きっとあなたは世界中を旅して、
離れた所に行っちゃうわ!それに学院なんて行ったらどうなると思う?
いままで周りに私しか居なかったから自覚してないのかもしれないけどあなたってカッコイイの!
しかも強くて頭も良くて、おまけに英雄2人の子供よ!?これでモテないわけないじゃない!!」
「・・・メ、メリル?」
「なによ!?どうせ可愛い娘と仲良くなって、私の事なんてすぐに忘れちゃうわ!だから私も一緒に行くのなんか文句ある!?」
「な、ない」
「ならいいじゃない!?もう、ユーリなんて知らないわ!」
そう言って、メリルは走って行ってしまった。
(・・・さりげなく今告白されたよな?)
取り残された俺は途方に暮れて、とりあえず食べかけのパンを齧った。
メリル登場です。感情が爆発したメリル。きっと鈍感なユーリにやきもきしてたんでしょう。
次回、まだなにも浮かんでません。
きっとまだ出発はしない、はず。