第十二話 入学試験と俺
お久しぶりです、ノアです。
更新が随分と遅れてしまいました。
まだ読んでくれている人がいるかわかりませんが、続けさせて頂きます。
そして、ついにやってきた入学試験当日。
俺は、何故かとんでもなく注目されていた。
「・・・一体どういうこった」
俺は試験会場に到着した。身体測定もあるので男女別のフロアなので今は一人、男子フロアにいるわけなのだけど・・・。
(うぅむ・・・なんだ、この視線はっ!?落ち着かねぇ)
(ふむ、昨日のギルドでの事が原因であろうな?)
(な、急に話しかけるなっての、驚くだろうが!・・・っていうか、ギルドがなんだってんだよ)
(昨日、ギルドでユーリのステータスを聞いたヤツが何人かいた・・・そのせいだろうなぁ?)
迂闊だった・・・ッ!極力目立つのは避けようと思ってたんだが。早くも俺の目標は崩れ去っていた。
「・・・はぁ」
ろくな事に、なりそうだな、と。俺の憂鬱は止まらなかった。
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一方、女子フロア・・・。
「おぉ、おぉおっ」
「ふ、フレイア?ちょっとハシャギ過ぎなんじゃ・・・?」
何故か、水着を着ての身体測定だった。なので水着を選ぶのだが・・・。
(フレイアったら・・・よっぽど嬉しいのかしら)
聖獣で狼王・・・女の子らしいことは無縁であろう彼女の筋書きで、この反応は・・・。
(何この子かわいいっ!)
「メリルっ、早く選ぼう、無くなってしまう!」
「はいはい、大丈夫よ、慌て無くたって・・・」
試験だと言うのに、そんな緊張感は全くと言っていいほどない二人であった・・・。
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(・・・あぁああ!うぜぇ)
ユーリは好奇の視線に晒され続け、もう限界だった。
観察するようなねっとりとした視線は、まるでセクハラされる女子のような感覚だった。
こちらの一挙一動にいちいちと「おぉ・・・」とリアクションを取られ、気にならない方がおかしい。
(まぁ、そうかっかするんじゃない)
創造主にたしなめられるがなかなか落ち着かない。ハッキリ言って限界は既に越えていた。
「よぉ、色男。お前が噂の大型ルーキーだってぇ?」
頭の悪そうな男が声をかけてきた。ガタイの良い男だったが、ユーリからすればそれだけだった。
「・・・なんだ、何の用だ?」
ユーリの機嫌が最高に悪い時に声をかけるという、最高に間の悪いことをやらかした男は馴れ馴れしく話を続ける。
「まぁそんなにピリピリすんなって?俺はあんたと仲良くしたいだけなのよぉ、色男さん?」
「・・・」
ユーリの機嫌の更なる低下などつゆ知らず、男はベラベラと続ける。
「なんでもお前さん、ギルドで噂になってるらしいじゃねぇか、おまけに美人の連れもいるんだってぇ?へっ、そりゃあんたくれぇに色男なら、女なんておもしれぇくれいに釣れるんだろうな?俺にもおこぼれってヤツを分けてくれよぉ、俺は戦闘でも中々使えるぜ?」
「・・・」
「俺はなぁ、腕っ節には自信があんのよ、俺はあんたに力を、あんたは俺に女を、悪くねぇ話だと思わねぇ・・・ひっ!?」
気がつくと、男の首筋にはナイフが当てられていた。
「俺はな、自分の女人に差し出すほど腐っちゃいねぇんだよ。・・・それに、お前のどこが腕っ節が良いんだ?」
ナイフをゆっくりと首元から離し、睨みつけてからその場を去る。
いつのまにか集まっていたギャラリーがスッと関係ないように顔を背ける。
「はぁ・・・やっぱ、ろくなことねーや」
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再び、女子フロア・・・。
「ねぇ、ちょっと聞いた?なんか男子フロアで騒ぎがあったらしいわ!」
「あ、知ってる知ってる!すっごいイケメンがいて、めちゃくちゃ強いんでしょう?」
わいわいと盛り上がる受験者達。
そんな中・・・。
「はぁ・・・アイツね」
「・・・そうであろうな」
「「ユーリを一人にすると、ろくなことにならない」」
少女達の苦悩は止まなかった。
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男女それぞれのフロアでの魔力測定、筆記試験を終え、試験は残す所実技試験のみであった。
「ちょっと、ユーリ?あんた一体何したのよ」
「な、なにがだよ」
「とぼけるでないぞ?こちらのフロアまで噂が届いておったわ」
実技試験にあたり、合流した途端にユーリは責められていた。
というか、何故フロアは別なのに、そちらまで噂が届くのか。
そして何故俺は責められなくてはいけないのか。
理不尽だと思う。
「いや、あんたが悪い」
「どう考えても悪いの」
美人二人の前では英雄のサラブレットも形無しで、ユーリはたじたじだった。
(っていうか何で考えてることわかってんだよ!)
(クククッ、女は鋭いからな?お前も苦労するな)
姿は見えないが創造主は間違いなくニヤニヤとしているであろう。
「はぁ・・・」
と、思わずため息を吐いた時であった。
「貴様ら、今すぐにそのだらしない口を閉じんと受験資格を剥奪するぞ」
シーンと、皆黙り込み、声の聞こえた方を見やる。
そこにいたのは、辛辣な言葉を吐いたとは思えない少女がいた。
むしろ幼女であった。
((((・・・ちっせぇ))))
会場の気持ちが一つになった瞬間だった。
亜麻色の髪を可愛らしいリボンで纏めツインテールにし、
ゴスロリチックな服装に身を包んだようz・・・少女は身長135cmほどしか無く。
長身のユーリの胸のくらいである。少しつり目気味の目も愛らしい。
だからこそ先程吐き捨てるように言われた一言が壮絶な違和感を生み出していた。
「あぁもう、リリア先生。そんな言葉使いはダメですよぉ」
「「「「先生ッッ!?」」」」
さらにやってきた知的そうな・・・しかし天然そうな女性は、少女を「先生」と呼んだ。
「ふんっ、リアか。邪魔をするな、これより実技試験を始める」
「邪魔じゃなくて、サポートするよう言われてきたんですってば」
そして、二人の会話を総合すると。
「し、試験監督!?」
誰かが叫んだ。すると・・・・。
ズビシィィッ!と痛々しい音が鳴り響いた。
「私語厳禁だ・・・次はチョークではすまんからな」
「わぁ、痛そう・・・」
((((チョーク!?チョークの音なのか今の!?))))
またしても会場は一つになった。
「ふん・・・それでは、実技試験を行う。貴様らの底力を見せてみろ」
ある意味、本当の試験の開始であった。
なんか、詰まってきちゃったので二回に分けます。
次回も試験編です。