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第十一話 幼なじみと狼王と俺

どんどんとタイトルが安直になってきました。

アクセス数を今まで怖くて見てなかったのですが、いつの間にか3万アクセス越えててビックリです。こんなベタな小説を呼んで頂きありがとうございます。

さて、俺は何故こんな事になっているんだろう。


「・・・・・・おい、もう帰らないか?」


「なに言ってるのよ。まだまだこれからじゃない」


俺とメリルは今、王都の市にいた。

正確に言えば俺はメリルに引きずられるようにして買い物に付き合わされていた。

あり得ないくらいの大荷物を抱えされて。


「泣いて・・・いいよな?」


「ほぉら、馬鹿なこと言ってないで!次行くよー」


俺は涙を流しながら・・・まぁ冗談だが、ともかく疲労困憊でメリルに引きずられて行くのだった。



二時間ほど前、明後日の入寮に備えて買い物をしようという事になり、泊まっている宿を出発した。

買い物と言っても武器は王様に頂いた物があるので、服やらタオルやらの日用品の買い出しだった。

そう言えども、男である俺の買い物なんてすぐに終わる。

ぶっちゃけた話最初の一軒目で済んでしまった。そして今は6軒目。

・ ・・つまり俺はメリルの買い物の荷物持ちと化していた。


「なぁ、そんなに買ってもどうせ学生なんだ。基本的には制服着るんだぞ?」


「いーの。こういうのはあっても困らないんだから」


(金はないと困るだろうが・・・)


どうやらお姫様は俺の意見など聞く気もないらしい・・・。

本物のお姫様シルヴィアを見習って俺にもやさしくして欲しいもんだ。

ドカッ!


「ユーリ、あんまり失礼な事ばっか考えてると殴るわよ?」


「殴ってから言わないでくれ・・・」


思いっきり殴られた腹を抑えながら文句を言うが気にした様子も無くメリルは店内の物色を続ける。

俺は一体なんだ。恋人じゃないのか、ちくしょー。


(くくくっ、もう少し乙女心を心得たほうがいいんじゃないのか?)


(うっせぇよ)


(くくっ、苦労するがいいさ。こんな気苦労も前世じゃ味わえないものだったろう?

これも幸せの代償だと思って噛み締めれば良いじゃないか)


(・・・余計なお世話だ)


確かに、前世じゃこんな事はありえなかった。

人とのふれあい(随分と暴力的だが)なんて、前はあまりに少なすぎて。

人の暖かみなんてとうに忘れていた。

だが俺がもう一度生まれたあの日。

涙を流しながら喜んで俺を抱きしめた父さんと母さん。

確かに自分はここにいると、存在していると感じられた。


「ねぇユーリっ、これはどう?」


(こんなのも、悪かないな・・・)


「あぁ、いいんじゃないか?でも、お前だったらこっちの色の方が良い」


「そ、そう?」


やっとまともに俺が服選びに参加してきたのが嬉しいのか、俺が選んだ淡い色のワンピースを抱きしめるメリル。


「それ、買ってやるよ」


「え、いいの?」


「あぁ、だから今日はもう勘弁してくれ。

ギルドにも行かなくちゃならないんだし、また今度付き合ってやるからさ?」


「・・・しょうがないわね、いいわよ」


口ではそう言いながらも、口元には笑みが浮かべられてて。

創造主の言葉通りで少し癪だが、なんだかいいな、と不意に思った。



ギルドに行くとカウンターでお姉さんがスマイル0円な笑顔で迎えてくれた。

「こんにちは、新規の方ですね。今日は一体どんな用件でしょうか?」


「ギルド登録に来ました」


「ご登録される方は?」


「俺たち2人です」


「かしこまりました。それではこちらに必要事項をご記入ください」


差し出された紙とペンを受け取り、書かれている通りに記入する。

たいして記入する量は多くないのですぐに書き終わる。


_________

ユーリ・レイヤード/人間族・男 


Lv:


〈筋力〉

〈魔力〉

〈体力〉

〈俊敏〉

〈運勢〉


〈称号〉




〈特性〉




〈職業〉無職

__________

まだ計測前なので、ほとんどガラ空きの資料。

これで能力測定をし、その情報を加えてギルドカードが作られる。

今記入したこの紙は特殊な物で、書いた情報がそのままギルドカードに移される。

普段はギルドで管理されており、なにか偉業達成すると、ギルドから二つ名などが与えられ、

ギルドカードにもそれが掲載されることになる。まぁ、原理などはよく知らないが。


「・・・はい、それでは能力測定に移らせて頂きます」


メリルの方の確認も終わった様で、次の行程に移る。


「こちらの水晶に手を置いてください」


まずメリルが水晶に手を置く、水晶が淡く光り、計測結果が映し出される。


「・・・はい、もう結構です。それでは読み上げますね。筋力C、魔力A、体力C、俊敏D、運勢Sですね。

通常なら最初は最低ランクのEからの人がほとんどなのに・・・とても優秀ですね。それに魔術属性は水と雷ですね」


そして続いて俺の番。水晶の上に手を置く。

気のせいかメリルの時よりも強めに水晶が発光したように見えた。


「・・・はい、もう結構で・・・・・・え?」


なんだろう、お姉さんが固まった。


「し、少々お待ちくださいっ」


パタパタと奥へ走って行くお姉さん。計測結果はギルド職員しか読む事ができないので俺とメリルはさっぱりで・・・。

いや、メリルは呆れたようにそっぽを向いている。


「どうしたんだろうな?」


「・・・まぁ予想はできるけどね」


意味が分からん。だが思案している間にお姉さんがまたパタパタと戻ってきた。


「し、失礼しました。それでは読み上げますね?筋力B、魔力S、体力A、俊敏AA、運勢Eです。

そして魔術属性は・・・・・・ぜ、全属性をお持ちです」


・・・はて、お姉さんはなんと言ったんだろう。

何事かと聞き耳を立てていたギルド内にいた冒険者達がどよめいた。


「・・・あぁ、ありがとうございます、はやくギルドカードを発行してもらってもいいですか?」


「あ、か、かしこまりましたっ!」


俺は周りの視線に耐えられなくなり、お姉さんを急かす。


隣ではメリルが、ほらね?とでも言いたそうにニヤニヤしている。


__________

ユーリ・レイヤード/人間族・男 


Lv:1


〈筋力〉B

〈魔力〉S

〈体力〉A

〈俊敏〉AA

〈運勢〉E


〈称号〉

ギルドメンバー



〈特性〉

狼王の加護、双剣使い、創造主の加護




〈職業〉冒険者

_________

なんだかLv:1にもかかわらずとんでもないパラメータだ。

ギルドで付けられるランクは、E、D、C、B、A、AA、AAA、S、SS、SSSとなっている。

というかスゴイパラメータのくせに、なんだ。「運勢」低すぎンだろう?

しかも特性の「狼王の加護」・・・?フレイヤって狼王だったのか?それに「創造主の加護」とは・・・。

いかん、頭が痛くなってきた。

このギルドカードは身分証明書にもなっているので、色々な場所で見せる必要があるが、特性は本人と本人の許可を得た人しか見れないらしいが、いくら何でもメリルに見せないわけにもいかないだろう。


(くくっ、良かったなぁ。最初っから最強だぞ?)


(お前・・・いつ俺を加護なんてしたんだ)


(ユーリが生まれた日)


ケロっと言いやがる。

だがもうどうしようもない。開き直るしか無い。


「・・・どうも、それで換金所ってどこですか?」


まだ固まっているお姉さんに訪ねる。


「あ、えっと、向かって右手にあります」


「ありがとう」


さっさとカウンターを離れて換金所に向かう。

前に倒した盗賊共の剣やらを換金するのだ。


「ね?やっぱりあんたの強さは桁違いなのよ」


「・・・いいから換金するぞ」


お姉さんの言う通り、向かって右側にあった。


「換金お願いします」


「おう、ちょっくら待ってな」


なんだか威勢の良い兄ちゃんだった。


「ん、随分あるな。・・・お、これもしかして盗賊のか?」


「はい」


「良かったな、懸賞金もかかってるぜ。・・・そうだなぁ、しめて5000万ロットってとこかな?」


「そんなになるんですか?」


「あぁ、なかなかの悪党だったんだよ」


この世界は「円」ではなく「ロット」という通貨で物が買える。

1ロットで1円、だから日本円と同じように換算できる。

5000万ロットって言えばしばらくは遊んで暮らせる。


「その値段でいいかい?ならこれが金だ」


どっさりと5000枚の硬貨が机に乗せられる。全部を亜空間に突っ込んで、換金所を後にした。




__________

「あぁー・・・つっかれたー」


宿に帰ってベットへ倒れ込む。

明日の入学試験に備えて今日は寝る事にする。

そもそも入寮、ようは合格前提にいろいろ買い物したりしたけど、大丈夫か?メリルの奴。

俺は問題なく入学できると思うが、アイツは座学が苦手だ。

筆記試験と実技試験の両方でパスしなければ入学はできない。


(くくくっ)


(なんだよ、何がおかしい)


(いいや、なんでもないさ・・・それよりユーリ、あの聖獣を呼び出してみては?)


(フレイヤを?)


(あぁ、いろいろとこれからの確認をした方が良い。なんなら一緒に入学したらどうだ?)


フレイヤを入学?何を考えているのだろうか。

いくら人型になれても実技試験はともかく筆記試験はまずいんじゃないか?


(それは呼び出してみてみないとわからないではないか?)


(あぁ、わかった)


「フレイヤ」


名前を呼ぶと、一瞬目の前の景色が揺らいだかと思った次の瞬間、

目の前には強さと美しさを兼ねそろえた銀狼がたたずんでいた。


『一体何の用だ、主よ』


「いや、ちょっとね・・・」


「主」と呼ばれるのがむずがゆく、何とも言えない。

そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、銀狼は堂々としている。

・・・・・・なんだか、なんでもない宿の一室がとんでもなく神聖に見えてくるから不思議だ。


「お前は今の人の世界の経済やら魔法知識などをどれほど知っている?」


『ふむ、質問の意図はわからないが一般的な事は知っているぞ』


「例えば?」


『うむ・・・ラフィール国にガルドムンクの商人が取引を持ちかけ、

その結果によっては戦の可能性もあり得るので多くの国家が気にしているのは有名だな。

それにローラントの経済状況は上々だ。大商人とうたわれるマクレイの功績が多いようだな。』


(・・・問題なさそうだな)


「字は書けるのか?」


『無論だ』


(・・・本当に大丈夫そうだな。おい、契約魔獣なんかと入学するのは他にもいるのか?)


(あぁ、べつに珍しい話じゃない)


(・・・そうか)


「なぁ、人化してもらっていいか?」


そういうとフレイヤの姿は、最初のように淡く煌めき、気づくとそこには美しい少女が立っていた。

上下黒のシャツとパンツ。腰までの緩くカールした銀髪に赤い目。

すらりとしていて170㎝はあるだろう身長。細いが程よく引き締められたスレンダーな体型。

・・・しゃべり方といい瞳の色といいどことなく創造主を彷彿とさせる。


「・・・これで良いか?主よ」


「あ、あぁ。・・・フレイヤ」


「なんだ」


「俺とともに学院へ入学しないか?」


「学院・・・人間のかっ?」


何だろう、すこしフレイヤのテンションが上がったのは俺の気のせいだろうか。


「あぁ、嫌か?お前は長らく封印されてたんだろ?だったらせっかくの機会だ、こんなのもアリだろ」


「そ、そうか人間にまぎれて学生とは・・・いや、しかし、となると”せいふく”も着る事ができるのか!?ううむ・・・」


なにやら自分の世界へ突入していってしまったフレイヤがブツブツとつぶやいている。


「・・・そんなにうれしいのか?」


「・・・ハッ、う、嬉しいというわけではないのだっ!ただ、ただすこぉし興味深いと思っただけでな?

本当だぞ?私は誇り高き狼王だぞ?たかが人間の学校ごときなんにも思っていないのだぞ!?」


なんだ、こいつ可愛いなオイ。テンションが上がったせいなのか、シッポと耳がでてしまっている。

犬耳、いや狼耳?がぴーんと立っていてシッポがブンブン揺れている。

何故だろう、少し苛めたくなるのは。


「そうか・・・誇り高い狼王フレイヤに変な事を言って済まなかったな。そんなに嫌なら・・・」


「なっ・・・あ、あぁ。ほっ、誇り高い狼王だからな・・・うん」


先程とは打って変わって耳は垂れ下がりシッポもしゅんと下を向いている。


(・・・何だこれ。面白い)


「でもなー、困るんだよなー、フレイヤなら主である俺の役に立ってくれると思ったんだがなー・・・」


その言葉に反応したかのようにぴーんと耳が起き上がった。


「あっ主の頼みなら仕方が無い!良いだろう私も学院へ入ろうっ」


すごく目をキラキラさせてシッポもブンブンどころかびゅんびゅん振っている。


(何この子、単純!)


「本当か?ありがとう、頼んだよ。明日が入学試験なんだ、急で悪いが・・・」


「うむ!全く問題ないぞ、人の子をはかるための試験なんぞに私が落ちるはずが無いではないかっ」


今にも踊りだしそうなほどテンションMAXなフレイヤさん。


「なぁフレイヤ、さっきから言おうと思っていたんだがな」


「うむ、なんだっ?」


にっこにこのフレイヤさん。


「さっきからずっと耳とシッポ出てるぞ」


「なっ!?」


きっと自分が感情が素直にシッポやら耳やらにでてしまう事を知っているのだろう。

びしっっと固まって微動だにしませんフレイヤさん。


「そんなに学院行けんのうれしいのか?」


「うっ・・・」


「良かったな、制服も着れるぞ」


「うぐぐっ」


「誇り高き狼王は、たかが人間の学校ごときなんにも思っていないんだっけな?」


「うぅっ」


シッポと耳はしょぼんと垂れ下がっている。

ずーんと効果音のつきそうなほど目に見えて落ち込んでいる。


「あー、悪かった悪かった、苛めすぎたな」


少し反省して頭をぽんぽんと撫でてやる。


「・・・うむ」


あっ、シッポ振ってる!


(なんか、犬みたいだな)


「撫でられると気持ちいいのか?シッポ、振ってるぞ」


「あぁ、狼は犬科だからな、撫でられるのは気持ちがいい」


「・・・おて!」


反射的にフレイヤが俺の右手に手を乗せる。そしてすかさず、


「おかわり!」


反対の手を差し出すとフレイヤも反対の手をぽすっと差し出す。


「って、私で遊ぶでない!」


「おぉ、すまんすまん」


おもわずやってしまった。後悔はしていない、まる。


「主よ、あまりふざけた事を考えるでない」


「・・・」


なぜ俺の周りの女性は俺の考えがお見通しなのでしょうか。

そして冷たい・・・。


「どうした、遠い目をして」


「・・・なんでもない」


コンコンコン。


「ユーリ?入って良いー?」


隣の部屋のメリルが来た。


「あぁ、ちょうどいい、紹介したいのがいるから入ってくれ」


ギギィと音をたてて扉が開き、メリルが入ってくる。

そして部屋の中央あたりにいるフレイヤを見るとぎょっとする。

まぁ、知人の部屋にこんなに目立つ人がいたら驚くだろう。


「誰よ?この人」


「俺の契約魔獣」


「あんた契約魔獣なんて持ってたの!?」


契約魔獣とはフレイヤの様に人と契約をした魔獣の事で、魔獣に認められなければ契約する事はできない。

しかも人間と契約する意志を持つのは上位の魔獣ばかりなので認められるのは容易ではない。

だがここは王都だ。そんな強者もうじゃうじゃいる。俺たちの村では英雄たる父さんと母さんくらいだろう。

父さんの魔獣は獅子の姿をしていて、母さんの魔獣は不死鳥だった。


「あぁ、武器庫から貰った指輪に封じ込められてた」


「っていうか、女の子じゃない!」


「フレイヤ、悪いが元の姿に戻ってくれないか?」


「了解した」


また先程のように姿が揺らいだかと思えば、そこには美しく気高い狼王である銀狼フレイヤがいた。


「・・・きれい」


褒められてうれしいのかシッポを振り、鼻先をメリルの手に押し付ける。

くすぐったそうにしながらも微笑んでフレイヤを撫でるメリル。


「ほんとに魔獣なのね」


「正確に言えば”聖獣”で”狼王”だけどな」


「・・・すごくない?ソレ」


「あぁ・・・フレイヤ、戻って良いぞ」


また同じようにして瞬時に人型になる。


「あらためてよろしく頼む、メリル」


「えぇ、よろしく。・・・フレイヤでいいかしら」


「構わない」


そしてフレイヤも入学させようと言う有無を伝えると、メリルも賛同して、部屋に戻った。


「主よ・・・」


「なんだ?」


フレイヤはスッと俺の前で片膝を着いた。


「これから如何なる困難が降り掛かろうとも、主とともにある事を誓おう」


「・・・ああ、よろしく頼む」


フレイヤは優雅に立ち上がるとフッと、綺麗に笑った。


「・・・・・・なぁ、お前の名前の由来を教えてやろうか」


「なんなのだ?」


「美しさと強さを兼ねそろえた、女神様の名前なんだよ」


「それは・・・私には勿体ない名前だな」


「いいや、ぴったりだよ」


ゆっくりと頭を撫でてやると、フレイヤはシッポを振った。



感想、アドバイスお待ちしています。



・・・いや、本気で心が折れそうになるので誰かコメントください(泣

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