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第十話 指輪と双剣、涙と本音

久しぶりの投稿です。

「それではこちらで少々お待ちください」


俺たちと共に城まで来たメイドさんに案内され、来客用と思われる部屋へ通される。

部屋にいるのは俺とメリルとシルヴィアだけ。

ソファーにメリルと俺が座りその向かいの椅子にシルヴィアが座っている。


「・・・それで?これはどういうことなのよ」


問いただすように聞いたメリル。

とういかコイツシルヴィアに対して砕け過ぎじゃないか?ここは一応王城の中なわけで・・・。

いかん、俺たち捕まるかもしれない。

だがシルヴィアは全く気にした様子も無く、普通に受け答えた。


「ええ、さきほども言いました通り、私はこの国の第2王女でして、先日他国のパーティーに出席するため国を出ていたのですが、今日は私の母の聖誕祭なのです」


(そういえば、街が異様に活気があったっけなぁ)


王都だからなのかと思ったが、それだけではなかったらしい。


「それで、いそいで国に帰る途中、盗賊に襲われたと・・・」


「はい」


・・・・・・・・・。


「で、なんで俺らはここに呼ばれてるんだ?」


「えぇ、実は助けて頂いたことを父へ報告したところ、是非会いたいと申しまして・・・」


「ってことはあれか?俺たちはこれから王に謁見するのか」


「まぁ、そうなるわね」


ため息を吐いたメリルはつぶやいた。

やはり神経の図太いメリルでも憂鬱らしい。


「ユーリ」


「なんだ?」


「あまり失礼なこと考えてるとぶん殴るわよ」


「・・・」


何故だろう、バレていた。

コンコン。


「失礼致します。王がお待ちです」


(さて、いよいよか・・・)


俺とメリルは謁見の間へと案内された。



__________


「君がユーリくんかっ!なかなかいい面構えだ!

聞けばライルの息子さんだって?アイツも良い息子を持ったなぁ!?」


マシンガンのようにガンガンと話し、謁見の間の厳かな雰囲気をぶちこわしている人がいた。




というか王様だった。





「お父様、落ち着いて下さい」


「ん、おお。そうだったな」


シルヴィアにたしなめられて、王は一度咳払いをし、俺とメリルを真っ直ぐ見つめた。


「ユーリ・レイヤード、メリル・レアドールよ、我が愛娘を救ってくれたことに感謝する」


「いえ、当然のことをしたまでです」


「ええ、困っている人を助けたら、偶然姫様だったのです」


「ふっ、そう謙虚にするでない。と、まぁ堅苦しいのはここまでだ。

 なにか望みはあるかい?私が叶えられる範囲で叶えよう」


なにかあるかとユーリはメリルに視線を向けるが、彼女は肩をくすめる。


「・・・陛下、いま自分たちには願いはありません」


「ほう・・・?」


俺が言葉を続けるのを感じ取ったのか、王様はじっと俺を見つめる。


「自分たちは学院へ入学する予定です。なので、王都には長らく滞在します。卒業までの過程で、なにか自分ではどうしようもないことに直面したとき、陛下のお力をお借りしても宜しいでしょうか?」


「・・・ふむ、いいだろう。にしても、さすがはあの2人の子だね、自分の中にある手段を有効に使いつつ無駄なことはしない」


どうやらよほど王様とウチの親は親交が深いらしい。


「2人は武器は何を扱う?」


唐突に王様は俺達に聞いた。いろいろな武器を扱うが・・・俺が一番父さんに筋が良いと言われたのは“双剣”だった。実際、父さんを初めて負かした時も用意はしていたのだが、その前に決着が着いた。


「俺、いや、自分は双剣です」


「私は魔法を使いますので・・・杖と短剣です」


「“俺”で構わないさ、・・・ほう、双剣か。それに杖と短剣ね」


なんだか知らないが面白そうににこにことする王様。


「おい、ロベルト」


「はっ」


「彼らを武器庫へ」


「はっ・・・は?」


「何をしているんだ、武器庫の鍵を取ってきたまえ」


「は、はいっ」


慌てて謁見の間を出て行く兵士(ロベルトさん?)。


「あの、陛下・・・?」


「ん、なんだい?」


「何故、武器庫に?」


「なぁに、お礼だよお礼このままじゃ私の気がすまない、どうか好きな武器を持って行ってくれ」


「いえ、ですが・・・」


やはりなんだか申し訳ない、食い下がろうとしたのだがロベルトさんが帰ってきてしまった。


「陛下、準備が整いましたので、彼らを案内させて頂きます」


「うむ、頼んだ」


そんなこんなで、うやむやに結局俺とメリルはご好意を受けることになった。




「お二人とも、王家の武器庫は様々な武器があるだけでなく、最初に「伝説のー」なんて付いたり、「宝具」なんて呼ばれてる物ばかりなのですよ」


俺とユーリはロベルトさんの案内で武器庫に向かっていた。そしてシルヴィアも「入学祝いを選びに行くのですっ」と言って着いてきた。


「へぇー、そうなの」


「えぇ、姫様のおっしゃります通り、王家の武器は素晴らしい物ばかりで、我々兵士の憧れでもあるのです」


ロベルトさんも勤務中の凛々しい表情だが、その“憧れ”がひしひしと伝わってくるテンションでメリルに語っている。よほどスゴイことなのだろう。そう言えば王様が武器庫の鍵を持ってくるよう言ったとき、少しロベルトさんは戸惑っていた。王を前にその命令に疑問を持つほど王家の人間以外、しかもただ姫君を助けたこと以外なんでもない若者を入れるなんて、相当滅多に無いことなのだろう。


コツコツコツと階段を下って行き、地下の武器庫へとたどり着いた。


「_____では、ごゆっくりとお選びください。王からは『数、物は問わない、好きな物を持って行きなさい』とのお言葉を授かっています」


そう言って、ロベルトさんは武器庫の前に待機し、俺たち3人だけが武器庫にいた。


「・・・さって、と」


(おい、ユーリ)


(なんだ、創造主。急に話しかけられると驚くんだが・・・)


(馬鹿、そういうことは驚いてから言え・・・この倉庫の奥にはお前にぴったりの物があるはずだ。先程も言っていた“双剣”ともう一つ、とんでもない物があるぞ?)


とんでもない物ってなんだよ、そう聞くと見ればわかるさと言って、さっさと引っ込んでしまった。

気がつくとメリルとシルヴィアはもうそれぞれ武器庫を物色しており、いなかった。


(・・・奥、か)


創造主に言われた通り、武器庫の奥へと歩みを進める。


「・・・・・・ん?」


そこは他の辺りと同じく、多くの武器に囲まれていた。

どの武器も相当の代物だろうという気配がするが、その中でも群を抜いて目立った物が2つあった。


(木箱、ともう1つは・・・)


それは小さな箱だった。

一瞬なんの装飾も無いのかと思ったが、持ってみると手触りが凸凹としている。薄暗くて見えないがおそらく何らかの模様が刻まれているのだろう。

木箱の方は双剣だろうが、この小さな箱の中身はなんなのだろう。

ゆっくりと箱を開ける。

入っていたのは指輪だった。シンプルだが美しい彫刻が施されており、真ん中には小さな宝石がはめられていた。


「黒い・・・宝石?」


所謂、ブラックダイアモンド、というやつだろうか。

派手ではないが不思議な魅力のその指輪が俺の心を引きつけた。

何故か、この指輪を貰うべきだと第六感が叫んでいる気がする。


(なにか、魔具の類いなんだろうか)


もし何らかの魔術的要素のある指輪ならサイズは関係ない。

服や靴、何にでも言えるのだが、魔術的要素のある装備品はサイズという概念がなく、それを使う者に合わせて大きさを変える。190㎝の大男と子供が同じ装備を使えるというわけだ。

恐る恐る、その指輪をはめてみる。


「・・・っ、なっ!?」


次の瞬間、俺の体は光に包まれた。



__________

なんだ、ここは。

周りを見ても何も無く、上も下もわからない。


『汝、力を望むか』


誰だ、お前は。


『我はこの指輪に封印されたし聖獣なり』


聖獣?


『聖なる力を秘めた獣のことだ』


そのまんまじゃないか。


『それ以外に言いようが無い』


そうか。


『もう一度問う。汝、力を望むか』


くれるんなら貰っとくさ。


『汝は如何にして力を使う』


守りたい者を、守るためだ。


『・・・良いだろう。我が名を呼べ、そうすれば契約は成立だ』


名前?知らないんだが。


『主が付けることによって契約が成立するのだ』


ふーん・・・お前は獣って言っても、どんな姿なんだ?


『気高き銀狼だ』


んで、オス?メス?


『メスだ』


・ ・・そのしゃべりでメスとは思わなかったよ。


『さあ、主よ、我が名を呼べ』


お前は・・・・・・


                             「フレイヤ」





__________

気がつくと、元の武器庫へ戻っていた。

もしや白昼夢だったのかと指輪を眺めると、黒い宝石が怪しげに煌めいた。


(夢では、なさそうだな)


そして情報が頭に流れ込んでくる。

1つ、フレイヤを呼ぶ時には名前を呼べば実体化する。

1つ、指輪ははめていなくても身につけていれば良い。

1つ、フレイヤは人型にも変化可能。なおかつサイズを変えることも。

つまりは子犬(狼だけど)にしておくのも可ということだ。

そして、実体化していなくても俺とのテレパシーは可、らしい。


もう選び終わったも同然なのだが、一応双剣も確認しておく。

木箱のふたを開くと、そこには同じデザインの黒と白の剣があった。


(これは・・・魔法剣か?)


それぞれの魔法属性には色があった。

水が青、火が赤、風が緑、雷が黄色、大地がオレンジ、そして光が白で闇が黒だった。大抵は1つの属性と決まっているが、もちろん強者は複数の属性持ちもいる。しかし複数持ちでも滅多に無い組み合わせは光と闇だった。

対極の性質を持つこの2つは同時に持つことは滅多に無い。

もちろん“滅多に”というだけであることはある。

そして双剣というのは色も形も全く同じというのがセオリーだった。

しかしこの剣は色が違う。しかも白と黒。


「・・・光と闇の複数持ち専用の双剣ってことか」


道理でこんな武器庫の奥深くでホコリ被ってるわけだ。

使えないからではなく扱えないから放置されている。

このままでは宝の持ち腐れだ。

ぜひ俺が有効活用させてもらおう。

そしておそらくフレイヤの指輪もその類いで使用者を選ぶ物なんだろう。

でなけりゃこんな所に放置されていない。

試しに双剣に魔力を込めてみる。

すると白い剣は暖かみのある光を帯び、黒い剣は漆黒の闇を帯びた。

魔力を断ち切りふと思う、鞘がない・・・。

そう思い木箱の中をみると、斜めがけの革の鞘が2つ。

俺は胸の前でクロスさせるように鞘を装着すると、双剣を一度仕舞い、もう一度取り出す。スムーズに出し入れできたので、急な戦闘でも大丈夫だろう。


こうして、俺の武器選びは終了した。


メリルやシルヴィアも選び終え、俺たちは一度謁見の間へと戻った。

王様は俺の選んだ双剣と指輪を見るとニヤリとし、満足そうに頷いた。


「そうだ、2人とも。今日は私の妻の聖誕祭なんだ。ぜひパーティに参加してくれ」


「いえ、俺たちは・・・」


「まぁ遠慮するな・・・おい、彼らにタキシードとドレスを用意してくれ!」


「はい」


またしてもロベルトさんが慌てて出て行く。

なんだか申し訳ない。


「では、こちらへどうぞ」


されるがままに、俺とメリルはそれぞれ別室へ移された。





「・・・・・・」


「まぁ・・・とってもお似合いでございます!」


「はぁ、どうも」

タキシードへ着替えた俺はよくわからないがメイドさんに囲まれていた。

元の服や双剣を、亜空間へ放り込み。指輪は鎖に通し、ペンダントのように首にかけ、服の中に入れてある。

パーティ仕様に前髪を少し上げられ、メイドさんたちの反応にたじたじになっていた。


「本当に素敵・・・」


「えぇ・・・」


うっとりとしながら俺を見つめるメイドさんたち。


(そう言えば・・・俺、イケメンなんだっけ)


呆然としながらくだらないことを考えていると、扉が開いた。

そこにはドレスアップしたメリルとシルヴィアがいた。


「・・・・・・」


「な、なによ、似合わないならそう言いなさいよ」


「だから似合ってるって言ってるではありませんか」


「う、うるさい」


シルヴィアは似合うと言い、本人は否定する。


「メリル、鏡見たか?」


「う、どうせ似合ってない・・・」


「すごい似合ってるぞ」


「なっ・・・」


シルヴィアは謁見の間でもドレスを着ていた。

だが俺は長年幼なじみをやっているがメリルのパンツスタイル以外を見たことが無かった。もちろんもうすぐ学院に入るので制服を着ることになるが・・・いや、今はそれはどうでもいい。とにかく綺麗だ、そう思った。


「お前のドレス姿なんて、あたりまえだけど初めて見たよ」


「・・・ほんとに似合ってる?」


不安げに聞いてくる姿がいつもの勝ち気な彼女と違って、とても可愛らしかった。


「あぁ、綺麗だよ」


「そ、そう」


「だから言ったでしょう?」


にこにことメリルに微笑むシルヴィアは楽しそうだった。


「ユーリ様、私はどうですか?」


「あぁ、さっきのドレスも良かったが、今のも素敵だ」


「うふふ、ありがとうございます」



そして、パーティは始った、のだが・・・。


「・・・なんで、いるの?父さん、母さん」


何故かウチの両親がパーティ参列者の中にいた。


「それはこっちのセリフだ。なんでお前が王家主催のパーティなんかに・・・」


目を丸くする両親に今日あったことを話した。


「・・・ってわけなんだよ」


「ほぅー、やるなお前も」


やるなの意味がわからない。

だが考えてみれば両親がパーティにいるのは当たり前だった。

自分の両親ということですっかり忘れていたが、彼らはこの国の英雄。

招待されてないほうがおかしい。


「おぉ、2人とも!久しいな」


後ろから声を掛けてきたのは王様だった。


「レンバルト!息子が世話になったな」


「それはこっちのセリフさ、おかげで将来の息子の有力候補に出会えた」



「ん、なんだ。そういう腹づもりなのか!そりゃあいいな、ははっ」


「2人とも、変わってないわねぇ」


なんだか聞き逃せない単語もあったが、昔話に華を咲かせる3人を放って。

俺はふらりとパーティ会場をさまよった。





「あ、ユーリ様!」


「あぁ、シルヴィア」


「こちらにいらっしゃったのですね」


「なんだ、探していたのか?」


「ええ、ぜひお母様がお会いしたいというので」


「王妃様がか」


「えぇ、お会いして頂いてもよろしいですか?」


今夜の主役に呼ばれているのなら行かないわけにもいかない。


「いいよ、行こう」


ということで王妃様に会うことになり、俺はシルヴィアに手を引かれて行った。




「こちらです」


「・・・」


どういうことだろうか、これは。

王妃様と思しき方が座っている。

とんでもなく偉そうに。


「ん、君がユーリ君か」


「はい」


「我が娘を救ってくれたこと、感謝する」


「いえ、その・・・王妃様、ですよね」


「あぁ、いかにもその通りだ」


「あの、すいません。もしや元は騎士だったりしますか?」


「ほお、よくわかったな」


ニヤリと王妃様が笑う。


「どことなく、騎士の様なしゃべり方だと思いまして」


「ふむ・・・シルヴィア」


「はい、なんですか?お母様」


「なかなか良い少年だな」


「へ?」


急に褒められたので驚いた。


「えぇ、ユーリ様は素晴らしい人です」


にっこりと笑いながら言うシルヴィア。


「初対面、しかも私は一応王妃という立場だ。にもかかわらず、ユーリ君は臆すること無く疑問を述べた。なかなかの勇気だ」


そんなことで気に入られたのかとぽかんとするが、王妃様は構わず続ける。


「最近は変におべっかを使う輩が多くてな・・・気が疲れてしまっていたんだ。貴族共にも見習って欲しいものだ」


「はぁ」


「なぁに、気にするな。褒めたのだから、気にすることはなにもない」


なんだか王様より威厳たっぷりの王妃様だ。

そんなこんなで王妃様とのお目通りが終わった。




「・・・ん?」


王妃様とシルヴィアと別れ、適当にパーティを過ごしているとメリルがいた。

1人の貴族風の男に誘われている。


「1曲で良いのです。僕と踊って頂けません?」


「結構よ」


「・・・いいから、さぁ!」


強引に手を掴むと、引っ張る男。


「いっつっ」


とっさに、メリルの手を掴む男の腕を掴んだ。


「な、何をするんだ君は」


「俺の連れに、あまり乱暴しないでくれるか」


「ユーリっ・・・」


驚いたようにメリルが俺を見つめる。

周りで見ていた人がひそひそと会話する声が気になったのか、


「・・・ちっ」


舌打ちをして男は去って行った。


「大丈夫か?」


「・・・」


「・・・テラスにでも行くか」


ゆっくりとメリルの手を引いてテラスへ向かった。





「お嬢さん、お名前はなんと言うのですか?」


「・・・」


「良ければ僕と1曲踊って頂けませんかね?」


「・・・結構よ」


さっきからずっとこの調子だわ。

見るからに貴族然としたこの男に、しつこく話しかけられ、うんざりだった。

だけど苛立ちの原因はそれだけじゃない。さっきユーリがシルヴィアに手を引かれて行くのを見た。ライバルに先を越され追いかけようと思った瞬間この男に声をかけられたのだ。


「1曲で良いのです。僕と踊って頂けません?」


未だにこの状態で気分は最悪だ。


「結構よ」

ツンと突き放すと男は顔には笑顔を浮かべながら少し眉間にしわを寄せた。


「・・・いいから、さぁ!」


いい加減埒があかないと思ったのか強引に私の手を掴む。

さわられただけでも不愉快なのにその手には力がこめられてしかも急に私の手を引いた。


「いっつっ」


だがその瞬間。男の腕ががっちりと掴まれた。


「な、何をするんだ君は」


慌てたように男が言うが、


「俺の連れに、あまり乱暴しないでくれるか」


ユーリの言葉に気圧されたのか押し黙った。


「ユーリっ・・・」


(なんでここにいるのよ・・・シルヴィアと一緒じゃなかったの?)

周りが少し不審に思ったのかこちらをジロジロと見る。

その視線と話し声が気になったのか、


「・・・ちっ」


男は舌打ちをして去って行った。




「・・・・・・」


テラスに着いたがメリルは何も言わない。

ただ俺の手を握っていた。


「なぁ、メリル、どうしたんだ?」


「・・・どうもしないわよ」


「バーカ、何年幼なじみやってると思ってるんだ。そう言う顔する時のお前は、なにか不安に思ってるんだよ」


「・・・・・・ゃあ」


「ん?」


「じゃあ私の気持ちもわかってよ!」


「・・・」


「そんだけ私の変化に気づくくせに、肝心なことは何もわかってないじゃない」


ぎゅっと俺の手を握るメリルの手に力がこもる。


「不安・・・なのよ。さっきあんたシルヴィアと一緒だったでしょ?」


「・・・」


「私のこと好きって言うくせに、何もしないじゃない。私たちあの日から手を握ったのも今が初めてよ?」


“あの日”ってのはあの告白の日だろう。

メリルの目には涙がたまっていた。

あと少しで流れてしまいそうで、メリルに悲しみによる涙は流して欲しくないと思った。


「本当に私のこと好きなの!?・・・ん」


気づいたら、彼女の唇を塞いでいた。

驚きによる涙でも良い。「悲しい」というままの涙は流して欲しくなかった。


「ん・・・ふぅ」


どれくらい、唇を合わせていたんだろう。ゆっくりと唇が離れる。


「・・・な、ななな・・・!?」


「ちゃんと、好きだよ」


あまりの驚きで言葉もでない様子のメリル。


「な、なんなのよもう・・・」


へたりこんだメリル。


「・・・不安だった気持ちが、どっか行っちゃったわ」


「そりゃ良かった」


「もう・・・ふふっ」


「はははっ」


彼女の涙は、いつのまにか引っ込んでいた。


少しスタイルを変えました。

ちょっとは読みやすくなったかな?


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