第九話 あぁ、予想通りっちゃそうだけど
予想通りの展開です。テンプレです、王道です、ベタです。
最近アクセス数が伸びてきました。
嬉しいです。
「あの、ユーリ様は王立魔術学園に入学なさるんですよねっ?」
「えぇ、まぁ」
「・・・」
「でしたら同じクラスになれたらいいですね」
「えぇ、まぁ」
「・・・・・・」
空気が、重い。
広々とした馬車の中、何故か俺の隣にピッタリと座るシルヴィア。
ムスッとしたままその逆隣に座るメリル。
楽しげに俺に話しかけるシルヴィアと窓の外を眺め一切微動だにしないメリル。
この、重力なんかよりさらに重いんじゃないかって空気の中、俺は2時間を過ごしていた。
(なんで・・・こうなった?)
シルヴィアの話に相づちを打ちながら、俺は2時間前を振り返っていた。
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二時間ほど前・・・。
__________
「いいですよ」
シルヴィアの上目遣いにやられて思わず護衛を承諾してしまった俺。
「なっ・・・、ちょっと!ユーリ!?」
まさか先を急ごうと自分の案(寄り道をしたい)を却下した俺がOKするとは思っていなかったんだろう。
メリルから反論の声があがる。
「まぁ、落ち着け、この様子じゃきっと何が何でも頼み込んでくるさ。だったら了承しちまった方が良いだろ?」
実際は俺の意志が弱かっただけなのだが、メリルの機嫌を損ねてはいけないと、耳元に口を寄せて丸め込む。
「え、ちょ・・・うん」
顔を真っ赤にして頷くメリル。
(くくくっ・・・いやぁ、惚れた弱みって言うのはあるものだねぇ)
(・・・・・・創造主、何のようだ?)
(なんだ、用がなければ出てきてはいかんのか?)
(そう言うわけじゃないが・・・)
人が周りにいる時は、創造主は実体化はしない、精神のみで俺に語りかけてくる。
「では、馬車にご同伴ください」
「ん・・・えぇ」
「・・・ふん」
なんだか結局メリルは機嫌が悪い。それに対しシルヴィアは満面の笑み。
(くくっ、しばらく見ておくさ。ユーリ、頑張れよ?)
(あ、ちょ!?)
こちらの言葉に聞く耳を持たず、創造主はさっさと交信(?)を止めてしまう。
(たっく、どうしろってんだ)
馬車に乗り込み、俺が座ると、右隣にメリル、左隣にシルヴィアが座ってきた。
この広い馬車で、何故こんなに至近距離に座るのか意味がわからない。
「では、改めてご紹介致します。私はシルヴィアと申します」
「えぇ、俺はユーリ・レイヤードです」
「・・・」
「おい、メリル」
「・・・メリル・レアドールよ」
ムスッとしながらも答えたので良しとする。
「はい、よろしくお願いしますユーリ様、メリルさん」
(・・・様?)
「あの、様は止めてもらえませんか?」
「・・・」
「いえ、ユーリ様はユーリ様ですのでっ!」
「・・・・・・ふんっ」
ダメだ。話が通じない。
この三人じゃ埒があかない。メイドさんは殺された護衛の代わりに馬車を運転してるし。
「お二人は王都へ行くのですよね?何をしに行くのですか?」
しまった、話題が変わってしまった。俺は「ユーリ様」(笑)のままなのだろうか。・・・うん、そうっぽいな。
「えぇ、学園に入学のために」
「え・・・ということは、ユーリ様は15歳なのですか!?」
「えぇ、まぁ」
「・・・・・・」
「年上かと思ってましたわっ」
目をキラキラさせて話すシルヴィア。一体何がそんなにうれしいのだろうか。
「身長もあるんで、勘違いは良くされます」
「いえ、そのなんというか・・・堂々となさっているとうか・・・」
後半がよく聞こえなかったがまぁいい。
問題はそこじゃない。
メリルだ。
この間の大暴露(告白?)の時以上の苛立ちようだ。一体どうしたんだろう。
さっきから一言もしゃべらない。シルヴィアが楽しげに話しかけてくるが、俺は混乱してそれどころじゃなかった。
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(そして、今に至ると・・・)
振り返ってる間になんだかとても時間がたった気がする。
だがまだ王都までは1時間もあった。
(・・・・・・あぁもうっ!)
「とってもお強いんですね?」
「まぁ、師匠がよかったので・・・」
メリルの心は穏やかではなかった。
さっきからユーリに話しかけている女のせいで。
「へぇ・・・あれ、ユーリ様、家名を『レイヤード』とおっしゃいましたか?」
「えぇ」
「もしかして、ご両親は・・・?」
「お察しの通りですよ」
「まぁ!我が国が誇る英雄のご子息だなんて、さすがユーリ様ですっ」
「いや、すごいのは父と母ですんで」
(な・に・が『まぁ!』よ!?)
腸が煮えくり返るとはこのことだろうか。ムカついて仕方がない。
(確かにライバルはいくらでもいるだろうとは思ったけどっ!いくらなんでも早過ぎるわっ!?)
ハーレム男なんてユーリにぴったりの言葉だと思う。
だけどもあんまりだ。浮気というか自分以外にも恋人を作って良いとは言ったが、嫉妬をしないわけではない。
ましてやこんなにも私を眼中に入れないなんて・・・。
「・・・・・・ふんっ」
(だぁあああっムカつくっ!!)
メリルの心は大荒れだった。
__________
素敵すぎます、ユーリ様。
私はこれまでこれほどの胸の高鳴りを感じたことはありませんでした。
「シルヴィアさんは・・・」
「シルヴィアで結構ですっ」
「いや、しかし・・・」
「いいのですっ」
「シルヴィアも王立魔術学園に入学するんですか?」
「敬語も結構ですっ」
「ですが「いいのですっ!」・・・わかりまし「敬語はなしですっ!」・・・わかった」
ユーリ様は困惑なさっていましたが、好きな殿方に親しげに呼んでもらえるのなら私は構いません。
(・・・好きな殿方?)
「・・・」
「シルヴィア、どうかしたのか?」
(好き、・・・そうですね)
「いいえ、なんでもありません」
先ほど知り合ったばかりの男性。ですが不思議と私は自分の気持ちに素直でした。
そして、ユーリ様の隣に座るメリルさんも彼を慕っていることに私は気づいていました。だから、
「私も、私も入学するんです。よろしくお願いしますね?ユーリ様、メリルさん?」
にっこりと、ユーリ様に向けるのと同じくらいの笑顔で言います。
「・・・っ?」
メリルさんがこちらを見つめます。すこしの驚きと、笑みを浮かべて。
「・・・えぇ、よろしくね」
「・・・?あぁ、よろしく」
ユーリ様は状況を理解していないようです。ですが、これはまぎれも無く。
(宣戦布告、です)
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いまいち、俺には状況がつかめていなかった。
「えぇ、よろしくね」
メリルがまともにシルヴィアと会話をしたので。
(・・・なんか、良い感じ?)
創造主からしてみれば、とんでもない勘違いをしていた。
_________
やっと王都へ入った俺たち。
だが馬車はまだ止まらず、そのまま王城へ向かっていた。
「あの、シルヴィア?」
「えぇ、なんでしょうか」
「なんで城に向かってるんだ?」
「私の家だからでございます」
「あぁ、家ね・・・え?」
『私の家だからでございます』
「・・・」
『ワタクシノイエダカラデゴザイマス』
「・・・・・・」
「「えぇえええーーー!?」」
さすがにメリルも驚いたのか、俺と共に声をあげる。
そんな俺たちをクスリと上品に笑って、シルヴィアは言った。
「改めまして、ローラント王国第2王女、シルヴィア・メイ・ローラントです。・・・ふふっ、よろしくお願いしますね?」
「「えぇぇええええ!?」」
どうやら、俺はとんでもない人と知り合い(しかもタメ口で呼び捨て)になってしまったようです。
えぇ!?シルヴィアって王女だったんですね?・・・まぁベタですが。
・・・次回、お楽しみに。
感想、ダメだし、アドバイス等々お待ちしています。(いやマジで)




