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ホラー小説【僕に値段をつけてください。】

作者: 虫松
掲載日:2026/05/15

雨の降る裏路地、街灯の点滅の下で、僕は座り込んでいた。


通り過ぎる人々の靴音は冷たく、誰も僕の視線には気づかない。


「僕を誰か買ってくれませんか?」


ふと、一人の男が足を止めた。


高級そうなコートを着ているが、その目はどす黒い欲望で濁っている。


「おい、ガキ。お前に何かできるのか?」


僕は顔を上げ、精一杯の愛想笑いを浮かべた。


「健康です。力仕事も厭いません。よく働きますよ」


男は鼻で笑った。


「そんな奴は五万といる。最近じゃ女のアンドロイドの方が高性能だ。飯も作るし、夜の生処理だって文句一つ言わずにこなすからな。お前にしかできないことはないのか?」


僕は少し首を傾け、彼の耳元で囁いた。


「……気に入らない人を、消すことができます」


男の眉がピクリと跳ねた。


「ほう、暗殺か? それとも隠蔽か? おもしろい。じゃあ、やってみろ!」


僕は指をパチンと鳴らした。


「ほら、あなたの記憶が消えた!」


男の目が泳いだ。自分がなぜここに立っているのか、目の前の少年が誰なのか、その

表情から意味が失われていく。


「ほら、あなたの存在が消えた!」


街を歩く人々が、男の体を避けるのをやめた。肩がぶつかっても、誰も彼を認識しない。彼は世界の記録から、一文字残らず抹消された。


「ほら、あなたの人体が消えた!」


コートだけが地面に崩れ落ちた。中身は霧のように霧散し、血の一滴すら残っていない。


僕は誰もいなくなった空間に向かって、にこやかに微笑んだ。


「僕にしかできない特技ですよ」


……沈黙。


「あっ、消しちゃったから、もう答えられないや」


「いけねぇ値段、聴く前に消しちゃった」


僕は男の着ていたコートを拾い上げ、また冷たい地面に腰を下ろした。


挿絵(By みてみん)


雨はまだ降り続いている。


「誰か、僕を買ってくれませんか?」


今度は、ちゃんと僕を正当な高い値段をつけてくれる人がいいな。



ホラー小説【僕に値段をつけてください。】


完結

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― 新着の感想 ―
ホラーじゃなく、そう言う世界の話かなーっ と、思いきや。 思いっきりホラーでしたね。 ……しかし、消しちゃったらお金貰えないから少し効率が悪い様な?? いや、元々消すのが目的だったのかかな?? (≡゜…
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