あの世、ふたたび
あの世から帰ってきてしばらく
まあ、あんまり変わらない日々が続く。
仕事に行くと「闇」はあいかわらずだったが、異動でまわりの環境が少しかわった。
よくなったわけでもない。
文字通り「かわった」だけである。
それだけでもよかった。
「前」を引きずらなくていいからだ。
同僚ともと上司は異動になった。
なにやら評価が下がってうんぬんとかいう噂を聞いたが
もうどーでもよかった。
好きにしてくれ。
ちなみに同僚は退職した。
引き抜きでもあったのかな。
まあいいや、もう会うこともないだろう。
ヨメによろしくな。
あいかわらずの日常のなかでひとつだけ違うことがある。
そう、あの世へ行ったときの記憶だ。
いつまでたってもそれは色あせるどころか
よりいっそうアタマのなかに住み着いている。
悪い感じはしない。
あのこどもたちは無事にいきたいとこにいけたかな~とか
バスの中から地蔵ズにソックリな人を探したりとか。
なにかにつけ思い出している。
要するに
ハマった、のだろう。
もう一回行ってみたくてあのツアーを探してみた。
でもどこにもそんなものは見当たらない。
さては特別企画だったのか。
例の雷モドキな友人に聞いてみるか?
いや、またおちょくられるのも癪だしな~。
「そろそろまた行きたくなってるんじゃない?」
って、どこから沸いたんだよっ。
「そ、そんなことは・・・。」
「あるんでしょ。まあ無理もないけど。」
「なっ、なんでいきたくなるんだよ。」
「それはねえ・・・。」
そう言って友人はちょっと目をそらした。
「地獄は魂の回帰する場所だからさ。」
部屋の気温がすうっと下がったのがわかった。
「・・・。」
をい、エアコン切れたぞ。
「てなわけで、はい。チケット手に入れておいたよ。」
こちらを見たときはいつもの友人に戻っていた。
エアコンも普通に動いている。
気のせいか・・・。
「1枚なのか。」
「そりゃそうだ。」
「むぅ。」
てなわけで、ふたたびあの世を訪れることになった。
ひそかに心躍っていたのはヒミツだ・・・。
「お疲れ様でございました。ヨミ航空ツアーへようこそ。」
前回と全く同じ、漆黒のスーツに身を包んだ執事っぽいお兄さんが立っている。
「わたくし、コンシェルジュの夜叉と申します。おひさしぶりでございます。」
覚えててくれたんだ・・・ちょっとうれしい。
「またお世話になるけど、よろしくね。」
「承知いたしました。」
例のネイルサロンみたいなブースにはいる。
「ご案内を務めます羅刹でございます。今回もよろしくお願いします。」
あら、制服かわったみたいだ。
「こちらこそよろしくね。」
やっぱり今回も単独ツアーみたいだな。
まあそのほうがうれしいんだけどサ。
前回と違っていたのは動く歩道が別の場所についたことくらいだ。
ショートカット通路なんだろうか、賽の河原は遠くに眺めただけで通過してしまった。




