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そうだ、あの世へいこう   作者: きじの美猫


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あの世ツアー

ごく普通に生きてきた。


何のとりえもなく、ただ平凡にその他大勢の中で過ごしてきた。


なんのいいこともなく、でもその分悪いこともなかったのかもしれない。


悪いことはないけど、なぜかいろいろあちこちいき詰まっている。


仕事でよくミスをする。


昔はそうでもなかったと思うのだが、


なにがいけない?


自分に自信が持てなくなってますますつまらないミスを連発する。


ちゃんとやったはずなのに見落としていたり、相手に聞こうと思っていたのに聞けなかったり。


これっていわゆるコミュ障の一種ですか?


いや、普通に話はするんだ。


見た目上は。


ちゃんとコミュニケーションできてるかといわれると、


はい、とはいいがたい。


相手にはわからないんだ。見た目上は。


普通に会話してるように見えるもんね。


最近やらかしたのもコミュニケーションの失敗というやつだ。


クライアントからの予定変更を同僚にメールをした。


週明けの打ち合わせを延期したいとのことだ。


返事がこないなとは思ったが、すでに週末の業後だ。いちいち回答などよこす必要はないと判断しているのだろう。昔からあまり重きを置かれていないからな。


なにかと小ばかにしたような扱いをするので嫌いだった。


それほど悪意があったわけではないが、からかわれるのはごめんだ。


顔を思い出すとわけもなくイラッとくる。


「チッ!」


事件は週明けに起きた。


メールを出しておいたのだが、そいつは休暇をとっていて見ていないまま


クライアントのところへ出向いていってしまったのだ。


まあ、あらかじめアポの再確認をいれたので相手先へお邪魔することはなかったのだが。


そいつがちょっと遅れて出社したところで上司に呼ばれた。


「なんでそういう大事なことをちゃんと伝えなかったの。」


「メールを入れましたが、はいっていませんでしたか。」


「そりゃあ受信してるよ。」


「それだけでは不足ですか?ほかの人の休暇までは把握できませんが。」


「だって返信なかったんでしょ。なんで確かめなかったの。」


「普通いちいち返信しないと思いますが。」


「連絡がつたわったかどうか確認しなくちゃでしょ。社会人なんだから。」


頭のなかが「?」でいっぱいになる以外なにもでてこない。


「たまたま休暇だったとのことですが、それは小職には把握できませんでしたし、伝達手段はメールで問題ないと思いますが。」


「休暇だろうがなんだろうがちゃんと伝わるところまで確認してよね。」


アンタに電話なんぞしたくない。


「とにかくそういうのは気をつけてもらわないと困ります。お願いしますよ。」


ひとのいうことは聞く気がないようだな。こいつら。


この事件がずっと尾を引いて、ことあるごとにマイナス査定されていることに気づいたのはそれから半年ほどもたってからだ。


それ以外にも小さなことをいくつもあげつらって「改善されていない」と主張しているらしい。


会社の中での評価はだれかがあがれば誰かが下がる。


つまり下がる役を演じる役者が必要なのだ。


これまではその役が入れ代わり立ち代わりだったものが固定化されたというわけだ。


異動しても固定化のフラグは引き継がれる。


最初からそういうレッテルつきで引き渡されるのだ。


こうなるともう最初がどうなのかを知らないまま、マイナスだけが上書きされていく。


周りが全部敵ではないのが救いだが、だれかに助けを求められるような性格でもなく、


あいかわらずひとりでいろいろ抱え込んで失敗の繰り返し。


こういうのを負の連鎖っていうんだっけ。


それでも朝はちゃんと起きて仕事に行ける。


ただの習慣とはいえ、仕事にはいくもの、とういう固定概念はそうそう覆るものではない。


むしろ出勤できなくて・・・のほうがいいのか。


いやいやそれだと相手の思うつぼ、じゃなかった、それこそ負のスパイラルで自分で立ち上がれなくなってしまう。それだけはいやだった。


暗闇の中で目を開けていることが多くなった。


あけているのかどうかさえわからない闇でも、どこかに光があるように感じた。


まだなにか光があるのか。


それを見つける自信も、見つけようという気力もなかった。


ただ、それが「ある」ということだけは信じることができた。


存在するだけで信じてもらえるそれがなんなのかはわからない。


でもそれはすごいものなんだなと思うと同時に、それはだれにでもあるんじゃないかなと思った。


しかしながら現実世界において救いをもたらしてくれるものなどあるはずもなく、平凡な日々をおびえながら毎日が過ぎていった。


そんななかでときおりやってくるものがある。


数少ない友人のなかで、とびきり奇抜で自分とはまるで正反対の人物である。


こいつは別な意味で「光」ていうより雷みたいなやつだ。


一緒にいるときは日常なんかどこかへ吹っ飛んでしまって、ちゃんと自分でいられる。


どういうチートだかわからないが、普通に学校卒業しているのに、またいろんな違う学校へ行ってさまざまな勉強をしたり、あるときは普通に就職しすぱっとやめて外国へいってみたり、自分の研究のようなものに没頭してみたり、とにかく自由だった。


「気分転換にどっかに海外留学とかいってみたら~?」


「どっかって・・・外国語とかできないし。」


そも、海外留学ってそういう理由で行くもんなのか。


「いけばなんとかなるって。」


「いやだよ・・・。」


まあまわりの環境ががらりと変わればなにか吹っ切れるのかもしれない。


「こことは違う世界なんかに行ってみたいな。」


「今時はやりの異世界ってやつ?」


「もおね~~~~~~~~。」


そんなところにいったらたちまちゲームオーバーになりそうだ。


「なんで異世界がはやるのかって考えたことある?」


「ん~?なんで?」


そもそも異世界の概念すらようわからん。


「みんな今いる世界でいきづまってることがあるんだよ。だから違う世界にいきたくなるんだろう。」


なるほどそうか。


「でもまるきり違う世界はこわいよね・・・。」


ここでもふんぎりのつかない自分がいる。


「ツアーでもないかぎりいけないよね。」


そんなものがあるわけないだろ!と自分にツッコむことさえむなしかった。


が、しかし。


数日後呼び出されてチケットを渡された。


「なにこれ。」


「うん~、ちょっといってみたらいいんじゃないかなって。」


チケットを見てみる。


”そうだ、あの世にいこう!ヨミ航空でのご案内です。”


「は?」


二度見、いや三度見したが理解できん。


「あの世って・・・・・・・・はああああ?殺す気かあ???」


「まあ、そうじゃないってwww」


友人曰く、あの世をちょっとだけ堪能しようというチケットらしい。


「片道なんじゃね?」


どうにもうさんくさい。


「いや~航空券はたしかに片道なんだけどねえ。」


それってめっちゃ危険じゃないか!


「帰りの保証はするってさ。」


たしかにチケットのすみっこに書いてある。


”お客様それぞれにあったスタイルでお送りいたします”


「どーゆースタイルだよ。まさかド座衛門てことじゃないだろーな。」


「まあ、そのへんは心配ないよ^^^^^^^」


妙に自信ありげだな。


結局友人のすすめに乗ってみることにした。

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