第一話
黄色の小さなバケツの中で赤い丸みを帯びた生き物が四匹ひょろひょろと泳いでいた。
「・・・どうしたんだ、ソレ。」
リュカは青い目を訝しげにそのバケツの中へおとして聞いた。
うたはその目ににこりと笑って彼らを覗き込む。
「金魚だよ。」
「あぁ、知っている。育てるのか。」
リュカはバケツから目を離さない。
「コマチが食べちゃうよ。」
くすくす、とうたがおかしそうに首を横に振って笑う。コマチとはリュカが大雨の日に拾ってきた黒猫のことだった。目は金と青のオッドアイで、あまり鳴かない彼女はうたにひどく懐いているため、もしも金魚など飼おうものならひとたまりもないだろうと想像できた。
「中庭に池があったでしょ?あそこの水がもう少なくなっててね。どうしようかと思っていたんだけど。」
ゆらゆら揺れる水面にうたの柔らかな声がこぼれる。
「この子たちを必要としている子がいるの。」
それは風のように流れていく、魔女の声だった。
運命の流れを読む力。
生命と会話をする力。
それを持つ人間を知る者たちは彼らを魔女と呼んだ。
八日目の朝を迎えた力ある者のみが魔女と呼ばれる。
東に生まれた三百年目の魔女がつむぐ、悲しく暖かな物語。
ホシボシノウタ。
第一弾の始まりです。
週に一度更新しようと思っています。
誤字脱字、また何でもいいので感想お待ちしています。