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52/53

50:告白以上を

セリアス様、もう帰ってしまわれたのだろうか。

中庭にも、会場にもいない。校舎にいるかもしれないと思い、私は走り出した。

自分でも何をしているのか分からない。拒んでおきながら、すぐに探すなんて。頭をよぎる考えに足が鈍る。まだ、考えもまとまっていないのに。

廊下に差し掛かったところで、人影が目に入った。

「セリアス……様……」

その言葉を聞いて彼は振り返った。

「リクシィ嬢?どうされましたか?」

一瞬だけ動揺が浮かんだが、すぐに平静を取り戻す。彼は私に近づいてきた。

「随分乱れていますね。大丈夫ですか?」

探し回ったせいで髪はぐちゃぐちゃ、涙を堪えたような情けない顔——確かに彼の目に映る私は散々な有様だった。

「セリアス様、ごめんなさい。勝手なことをして……でも、嫌いになったわけじゃなくて。どうしていいか分からなくて」

「リクシィ嬢。大丈夫です。こちらこそ困らせてしまってすみません。そんな顔をさせるつもりはなかったんです」

そう言って、セリアス様は悲しげに微笑んだ。私だって、そんな顔は見せたくなかった。あのとき言葉の続きを聞けば、私の嫌なところまで知られてしまいそうで怖かったのだ。

「今までと変わるのが怖かったんです。私は、あなたと一緒にいるのが好きでした」

祈るように紡いだ言葉に、彼の声が一瞬震えた。静かな廊下にその震えがよく響く。

「――リクシィ嬢」

「僕も、リクシィ嬢のことが好きです。僕の好きはあなたと同じとは限らないのかもしれません。けれど、ただあなたと一緒にいたい。それが独占心に近い部分もあるかもしれませんが……」

少し顔を綻ばせて彼は続ける。

「あなたが望まないことはしないと約束します。だからお願いです。どうか、これからも一緒にいてくださいませんか?」

それは告白以上のものだった。彼の言葉の重みが胸に触れる。

「本当に、私でいいのですか?もっと普通の女の子に言うべきでは——」

混乱する私に、彼は優しく笑った。

「あなただから言っているんです。誰より強く、美しく、聡明で、同時に繊細なあなたを」

恋愛の仕方が分からない私でも、ただ嬉しかった。そんな彼と一緒にいたいと素直に思った。

「私でよければ、あなたと一緒にいさせてください。いつか私も同じ想いを抱けるようになるまで、待ってくれますか?」

セリアス様は苦笑して言った。

「もちろん。たとえあなたが別の人を想ったとしても、今ここで僕が言った言葉は変わりません」

そう言うと彼は、静かに私を抱きしめてくれた

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