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49:研究者は向き合う

「ゼイン様、ありがとうございます。」

少し疲れを見せながらも笑うゼインに、リクシィは深く頭を下げた。

「いいの、いいの。俺が魔法を見せつけたかっただけだから。」

「それにしたってすごいよねぇ。もしかしてリクにもできないんじゃない?」

パパラがニヤニヤして、ツンツンとリクシィをつつく。

「そうですね。きっと私にこんな美しい魔法は使えません。」

穏やかな微笑みを見せたリクシィの頬を、ゼインはムニっとつまんだ。

「んなわけないだろ! やってみないとわかんないし、絶対リクシィなら出来る!」

ゼインの声が少しだけ熱を帯びる。

「リクシィは変なとこで自己評価低すぎ! セリアス言ってたぞ、リクシィの魔法は綺麗で、魔力の扱いが群を抜いてるって。」

その名前を聞いた瞬間、リクシィの視線がわずかに揺れ、深くうつむいた。

「そうなのですか? 嬉しいですが、残念ながらそれはお世辞でしょう。」

「なぁ、リクシィ? それ本気でいってるのか?」

「リク、本気で言ってる?」

ゼインとパパラ、二人の声が重なった。

驚きと、ほんの少しの怒りが滲んだ声色だった。

リクシィの肩がビクリと強張る。

「……わからないです。」

消え入りそうな言葉が、リクシィの口から零れ落ちた。

ガバッ――

突然、パパラがリクシィの胸に飛び込んだ。

「パ、パパラ? どうしたんですか?」

「ねぇリク。あなたは鈍感じゃないでしょ? 気づいてるんでしょ?」

リクシィの瞳がハッと揺れる。

「それも結構前から。それでもあなた、一緒にいたでしょ?」

パパラはリクシィの耳元で囁く。

「いつか想いを告げられることにも、気づいていた。」

「っ……!」

ドンッ――

リクシィはパパラをそっと押し返し、距離をとった。

「おい、リクシィ!」

「大丈夫、ゼイン。私が……意地悪言ったの。」

震える声で言うリクシィを真っ直ぐ見つめ、パパラは言葉を続けた。

「私、嬉しかったの。リクが人からの好意を感じ取っていながら、人から離れていかないのは初めてだったから。

だから! もっと向き合ってみて欲しい。」

パパラは息を荒げ、声を張り上げる。

「リクもセリアスも、このままだと辛いまんまだよ!」

「リクシィ。俺もそう思う。」

ゼインも低く落ち着いた声で口を開いた。

「俺、リクシィもセリアスも大切な人だから、二人が仲違いしてるのは悲しい。

だから……セリアスの気持ちを、きいてみてくれ。」

音にならないほど小さく俺の気持ちもとゼインは続けた。

「でも――」と言いかけたリクシィを、

「「でもじゃない!!」」

二人が声を揃えて遮る。

その勢いに押されたリクシィは、戸惑いながらも顔を上げた。

「わ、わかりました……観念します。セリアス様と、話してみます。」

「よろしい!」

パパラは満足そうに頷くと、リクシィの背をポンッと押した。

「ほら!今すぐセリアス探しに行く!!」

「えっ、ちょっ――!」

リクシィは慌てて扉へ向かうが、そこでふと立ち止まる。

そして、魔法を発動させ、小さな箱を呼び出した。

「ゼイン様、これ……今日のお礼です。使い方は箱の中に入れてあります!

本当に、ありがとうございました。」

箱をゼインに押し付けると、リクシィは小さく頭を下げ、そのまま走り去った。

* * *

「ゼイン、よかったの?」

静まり返った部屋で、パパラがぽつりと尋ねた。

「んー?何が?」

ゼインはリクシィから受け取った箱を眺めながら答える。

「ゼインだって、リクシィのこと好きでしょ?それなのに、セリアスを応援するの?」

「……これは俺の勘だけどさ。」

ゼインは箱を指でくるくる回しながら、ゆっくりと言葉を選ぶ。

「リクシィは、まだ答えを出せないんだと思う。

だから……いつかリクシィが答えを出そうと思ったとき、選択肢は多い方がいい。」

そう言うと、箱を開けたゼインの目が丸くなる。

「おっ、髪を乾かす魔道具か!すげぇ、これ高いやつじゃん。」

「……やっぱり、ゼイン優しいね。そうやって想いを伝えらはなくなっちゃうかもよ」

パパラは苦笑しながら肩をすくめた。

「まあいいや。私はリクシィが幸せなら、それでいいから。」

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