39:第三王子と不本意なダンス
最悪だ。
ジルコリア様は弟のエリオットと同い年で、昔から仲がいい。
だが、私のことはお嫌いのようだ。
私とリオが話していると必ずと言って良いほど割って入り、私とリオを遠ざけようとする。
「リクさん? どうされましたか、遠い目をされていますね?」
笑顔。けれど、その笑顔が胡散臭い。
この裏では、私をどうやって遠ざけるかを考えているに違いない。
「いえ、特に何も。それよりジル様、ご令嬢たちと踊って差し上げては? みなさん喜ばれますよ。」
この言葉の意味は、簡単に言えば――どっか行け、だ。
「いえいえ、そんなそんな! お兄様たちならまだしも、わたくしなどでは! それとも……リクさんは、わたくしと踊ると喜ばれますか?」
――やられた。
こう言われては「はい」としか答えようがない。
どれだけこの王子は、私とリオを遠ざけたいのだろう。
「ふふふ、もちろんです。」
リオ、そんな憐れむ目で見ないでください。
さらに悲しくなってしまいます。
「では、踊りましょう!!」
ジルコリア様はもはや、したり顔を隠しきれていない。
だが、身分的に断るのは不可能。
差し出された手を取ると、抵抗も虚しく引きずられるようにして会場の中心へ。
「少しは嫌がるオーラ、隠す気ないんですか? 一応、僕、王子ですよ。」
「リオの腕が恋しい。」
「……あんまりリオにベタベタしないでください。あなたのせいでリオは女性にアプローチされないんですよ。」
なぜ私といたらリオがモテないのだろう。
理屈が分からない。
「はぁ、あなたが綺麗、、、あー、なんでもありません。あなたはそのままでいてください。」
「呆れてますか?」
「呆れてます。」
酷い。
「あーもう、曲終わりますね。踊ってくださりありがとうございました。リクさん。」
リオの前にいる時とは打って変わって、無表情。
――あなたこそ、そのオーラを隠してください。
「ありがとうございました。」
曲が終わって礼をした瞬間、私は急いでリオの元へ帰った。
その様を見たジル様がまた呆れた顔をしていたが、気づかないふりをした。
その後はリオやパパラ、セリアス様と話して、つつがなくパーティーは終わった。
……もう二度と、パーティーには参加したくない。
というか――早く、あの道具を完成させたい。
量産は現時点で不可能。
だが、ようやく魔力がない人でも魔法を使える道具が作れるのだから。




