表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/53

35:市場の無自覚デート

ここが市場! 色とりどりの布で飾られた屋台が並び、香ばしい匂いや甘い香りが入り混じる。人々の笑い声、呼び込みの声、鉄板の上で油が弾ける音――まるでお祭りのようだ。

「そんな楽しいか? なら誘って良かったわ!」

「はい! ゼイン様、本当にありがとうございます!」

浮かれていたせいで今気づいたが、ゼイン様は私服ではないか!

一方の私は制服……これはさすがに場違いだ。よし、着替えよう。

ゼイン様の服装は、灰色のシャツに黒い細身のズボン。動きやすそうで、シンプルなのにどこか洗練されている。やっぱり、センスがいい。

それに合う服……あれでいいか。

「ゼイン様、ちょっと待っていてください」

「了解」

路地裏に身を隠し、魔法を発動する。

白い襟付きのシャツに、さらりとした黒のワイドパンツ。

以前作ってみたはいいが、着る機会を流していた。

この世界では少し珍しいだろうが、これなら浮かないはず。

「お待たせしました」

ゼイン様は私を見て目をぱちくりとさせた。

「変ですか?」

私の問いに、彼はハッとしたようにまばたきをして――

「いや、すごい似合ってる」

あんまりまじまじと見られるから、さすがに頬が熱くなる。

「いっ、行きましょう!」

彼の腕を引っ張る。

「引っ張るなよー。第一、リクシィここ初めてだろ? 迷子になったら大変だ」

良かった。ゼイン様、いつもの調子に戻っている。

「何か食べないか? こんなに屋台がいっぱいあるんだ、選び放題だ!」

「ゼイン様は食べることが好きなのですか? ルミナフェスタでもたくさん召し上がっていましたし」

「そうだ! 何かを食べることって、生きる上で必ず必要だろ? だったら、その行為に価値を見出せる方がいい!」

確かに、理にかなっている。

「私は研究に熱中して、よく食事を忘れてしまいますが……その考え、素晴らしいと思います」

「リクシィらしいな。えっと……おじさん! その串焼き二本ちょうだい!」

香ばしい煙を上げる屋台のおじさんが笑顔で声をかける。

「ゼインじゃないか! 綺麗なお嬢さんだね、彼女かい? 隅におけないねぇ」

「同じ学園の子! 綺麗なのは同意するけどなぁ。ありがと!」

ゼイン様は軽く笑って、私に串焼きを差し出す。

「リクシィ、前に串焼き美味しそうに食べてただろ? ここのも美味しいから食べてみて!」

「ありがとうございます」

口に入れると、表面は香ばしく、中は肉汁が溢れ……熱っ! でも、美味しい。

「ゼイン様、すごく美味しいです」

「顔見たらわかるわ! すっごく気に入ってくれたみたいで良かった」

「代金を教えてください。払います。ここは都市部ですからお金で支払われましたよね?」

「んー? 内緒ー。気にしなくていいの。前にすっごい綺麗な宝石もらっちゃったし」

……この調子では、絶対に受け取ってくれなさそうだ。

なら、あの道具を完成させよう。そうすれば、きっと喜んでくれる。

「リクシィ、何考えてんの? まだまだ美味しいものあるからさ、食べ歩きと行こう?」

「はい!」

その後、甘い蜂蜜パイ、香り高いハーブ入りパン、冷たい果実水――気づけば両手がいっぱいになるまで買い込んでいた。

笑い声と屋台の喧噪に包まれ、時間があっという間に過ぎていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ