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31:魔法ショーのジンクス②

 魔法ショー――それはこの学園の教師たちが、魔法を駆使して生徒を魅了する、ルミナフェスタの最後を飾る一大イベント。

 去年は前世でいう「イルミネーション」。夜空と校庭を覆い尽くす光の波は、多くの生徒の記憶に残ったという。

 では、今年は何を見せてくれるのだろう。


「リクシィ、なんか楽しそうだな。研究者の血が騒ぐってやつ?」

「はい! 去年の魔法ショーでは、色とりどりの光を作り出したらしいんです。それ以前は、自分の意志で特定の色を魔法で出すのは不可能とされていたんですよ! それを人前で披露できるレベルに仕上げた、その技術と工夫!」

「……リクシィ嬢、少し落ち着いた方がいいかと。ほら、スピンネル先生が遠くから凝視してます」

「あっ……」


 つい熱く語りすぎたらしい。


「セリアスにさ、前から聞きたかったんだけど、いつリクシィと仲良くなったの? クラス違うのに、試験でペア組んでたじゃん?」

「なんですか突然。……少々トラブルがありまして、そのとき助けていただいたんです」

「助けただなんてとんでもないです。ただ、自分の研究成果を試しただけですから」

 私がそう返すと、セリアス様は苦笑した。


「へぇー、何したんだか。――おっ! 始まるぞ!」


 ゼイン様の言葉に顔を上げた瞬間、藍色の夜空を細い光が勢いよく駆け上がる。

 一瞬の静寂――「ぱんっ」と乾いた音が響き、金色の火花が四方八方に花開く。

 赤、青、緑の粒が尾を引きながら、ゆっくりと地上へ降りてくる。

 最後には吸い込まれるように夜空へ消えた。


「花火……だ」

「すごく綺麗ですね!」

「すげぇ!」


 2人が目を輝かせる中、私はふと視線を落とす。

 人混みの中に――様子がおかしい人物がいた。


 スピンネル先生だ。


 暗がりでもわかる。あれは“普通”じゃない。

 胸騒ぎがして、私は人波を抜け、先生のもとへ駆け寄った。


「スピンネル先生、大丈夫ですか?」

 近くで見ると、顔は真っ青で、額には脂汗。

「医務室へ行きましょう」


 軽く浮かせる魔法をかけ、抱きかかえる。

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 かすれた声で、同じ言葉を繰り返していた。


 ゼイン様たちに声をかけられなかったが、この際仕方がない。

「先生、落ち着いてください。大丈夫ですから」


 医務室に着くと、そこは空っぽだった。

 私は先生を椅子に座らせ、明かりを灯す。


「先生、お一人でも大丈夫ですか? 今、養護教諭を――」

「待って!!」


 掠れた声に足が止まる。

 スピンネル先生は、私をまっすぐに見つめていた。

 蒼白な顔に、汗が光る。


「アレクサンドラさん……あなた――花田美月って、知ってる?」


 その名は――

 間違いなく、私の前世の名前だった。


そしてふと思い出した。魔法ショーのジンクスを。

『魔法ショーの間ともに過ごしたものは運命の相手である。』

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