30:魔法ショーのジンクス
「パパラ、ゼイン様、お疲れ様でした。壮絶な戦いでしたね」
私がそう言うと、セリアス様も隣で悔しそうにうなずいた。
「えぇ……本当に、お疲れ様です。ゼインの手には虚を打たれました」
「本当だよぉー。勝ったと思ったのにぃー。……じゃあ私はジェードに慰めてもらってくるね!」
さっきまでの悔しそうな顔はどこへやら、パパラは満面の笑みを浮かべ、婚約者の元へと駆けて行った。
「やー、楽しかったわ! 今までは家族とか近所の人としかやってなかったから、こんな強いやつとやるのは初めて!」
優勝賞品のチェスセットを抱えながら、ゼイン様が笑う。
「なぁ、これどこに置こう? 流石に持ったまま歩くのはきつい」
確かに、私たちの教室は別のクラスに貸し出されているし、置き場は困る。
「それなら、私の部屋に魔法で送りますか? 後で取りに行くのは少し面倒かもしれませんが」
「ダメです!!」
突然、セリアス様が声を荒げた。
「なんで?」とゼイン様が首をかしげる。
「そ、その……女性の部屋に……上がるのは、控えた方が……」
その耳まで赤く染まっていくのが、横からでも見えた。
なるほど、そういうことか。
「それなら全く大丈夫です。ゼイン様は、前にもいらしたことがありますし」
「えっ……?」
セリアス様が一瞬で固まった。
ゼイン様は「あー、あそこか!」と笑って納得し、私にチェスセットを渡す。
魔法で研究室へ送った瞬間、ふとセリアス様を見ると――まだ固まったままだ。
「セリアス様? 大丈夫ですか?」
返事はない。ただ視線だけが、私とゼイン様の間を行き来している。
「リクシィ、あそこにセリアス連れてってもいいのか?」
「もちろんです。セリアス様、後でご一緒しますか?」
「……っ、はい」
その返事は会話を聞いていたのか、いなかったのか。
そんな空気をさらりと切り裂くように、ゼイン様が言った。
「なぁリクシィ、今日の最後に魔法ショーがあるらしいんだけど、一緒に見に行かない?」
その目は、無邪気な子供のようにキラキラとしている。
「ぼ、僕も一緒に行きたいです」
セリアス様が一歩前に出る。
いいのだろうか、セリアス様はゼイン様が嫌いなんじゃ?
やっぱり彼の目は少しゼイン様を睨んでいるように見える。
魔法ショーにはもともと行くつもりだったし、断る理由はない。
「もちろんです!」
……ただ、パパラが「魔法ショーには不思議なジンクスがある」と言っていたのを、今になって思い出しそうになる。
でも、何だったかは思い出せない。
――まぁいい。今日は珍しい魔法が見られるのだから。
ルミナフェスタには学園の生徒だけが参加しています。
パパラの婚約者ジェードはリクシィたちの2歳上です。




