27:セリアス様は羨ましい
今回は普通にリクシィ視点です。
舞台は終わった――はずなのに、私の怒りはこれからが本番だ。
「ゼイン様!! 本番で突然アドリブなんて、やめてください!」
目の前のゼイン様は正座。私は完全に怒っている。
「パパラも! ゼイン様の暴走を止めてください!」
少し離れた場所でパパラはくすくす笑っている。……笑っている場合ではない、あなたにも責任はあります!
「私は止めましたぁー! でもゼインくんが無視して突っ走ったんでーす! リクがいなくなっちゃう気がしたらしいでぇーす!」
「パパラ、それ言うな! 恥ずかしい! あー、リクシィ、その話忘れてくれ!」
いなくなる……?私が?
「そんなこと、あるはず――」
「アレクサンドラさん、お客さんです」
声に振り向くと、フォルセティア様が立っていた。
「アレクサンドラ嬢! お疲れ様です」
落ち着いた笑みとともに、こちらへ歩み寄ってくる。
「すみません、アレクサンドラ嬢。この状況は?」
舞台直後から叱り始めたせいで、私はまだ衣装姿のままだ。正座しているゼイン様を立たせて答える。
「少々、劇の最中に問題が起きまして……まぁ、そういうことです」
フォルセティア様の目がわずかに見開かれる。
「あんなに素晴らしかったのに、問題が?」
「それ本当ですか? 良かったー! 俺、練習でやってなかったことやっちゃって――」
ゼイン様の言葉に合わせ、フォルセティア様の目つきが鋭く変わったような?
「そうですか」
確信した。彼はゼイン様に冷たい。
空気が微妙に張り詰めた中、私は話題を変える。
「それで、フォルセティア様。何かご用事が?」
彼は少し慌てたように姿勢を正し、
「アレクサンドラ嬢、その……とても美しかったです。その軍服もよくお似合いで」
――素直に嬉しい言葉だった。
「リクシィ様、良かったですね!」
パパラが妙によそ行きの声で笑う。
「はい、とても嬉しいです」
すると、ゼイン様がこそこそと「え、リクシィ、パパラどうしたの?」と聞いてくる。
パパラは圧のある笑顔でゼイン様を見つめ、フォルセティア様は虫を見るような目をしている。……このままでは危険。私は魔法でゼイン様の口を塞いだ。
「んーっ、んー!」
抗議しているようだが、すみません、今は黙っていてください。
「フォルセティア様、少し外に出ましょう」
背中を押して外へ連れ出す。
何を話そうか迷っていると、彼が口を開いた。
「アレクサンドラ嬢は、彼と仲が良いのでしょうか?」
「ゼイン様とですか? はい、仲は良いつもりです。……フォルセティア様は、彼のことがお嫌いなのですか?」
少しの沈黙の後、彼は低く呟く。
「嫌いというより……羨ましい」
小さくて聞き取れず、聞き返すと、今度はしっかりと目を合わせて言った。
「嫌いです。アレクサンドラ嬢、僕のことを名前で呼んでください。そしたら、あいつのことも少しはましになるかも?」
あまりに爽やかな笑顔で言われ、思わず笑ってしまう。
「もちろんです。……えっと、セリアス様?」
「はい、リクシィ嬢」
こうして、翌日は戦術科に顔を出すと約束し、フォルセティア――いや、セリアス様と別れた。




