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25:幕が上がる

前話に引き続きセリアス視点です。

幕が上がり、物語はゆっくりと動き出した。

 白い軍服に身を包んだゼインと、動きやすいドレスのサフィア嬢が舞台に立つ。その一瞬後、舞台は暗転し、重厚なナレーションが響き渡った。

「かつて同じ大陸で栄えた二つの国──光の魔法を操る『黎明の国』と、闇の魔法を司る『黄昏の国』。その二つは、ひとつの宝石を巡って争っていた」


 再び照明が灯り、サフィア嬢──エルシア姫が立っている。その傍らにはゼイン演じる騎士ジル。

 そこへ、真っ黒な軍服の人物が現れた瞬間、僕は息を飲む。

 長い髪、鋭い眼差し。魔力の揺らぎでわかる。アレクサンドラ嬢だ。

 男装し、低い声で言葉を紡ぐその姿は、普段の彼女とまるで違う。


「そなたが黎明の姫か? 何故俺を呼び出した?」


 役名はカイ王子。声色すら変えられるとは、彼女の演技力に驚かされる。

 エルシア姫が一歩前に出て、凛とした声を響かせた。


「カイ王子、貴方はこの戦争が無意味だと思ったことはありませんか?」


 観客席にいてもわかる、二人の間に張り詰めた空気。

 カイ王子は無機質な顔で答える。


「無意味だとは常々思っている。だがこの戦争は、黄昏の国の民の意思だ。俺は王族として、その意思を尊重しなければならない」


 エルシアの護衛であるジルが警戒心をあらわにするが、姫はそれを制し、話を続けた。

 やがて話題は、賢者フィロスへ。賢者から届いた手紙──それが物語を動かす鍵らしい。

 カイはエルシアに歩み寄ろうとするが、ジルが剣を構えて阻む。


「姫様に近づくな」


 緊張感が一気に高まる。

 次の瞬間、エルシアの制止も聞かず、カイとジルの決闘が始まった。

 結果はジルの勝利だが、僕にはカイの動きが妙に“隙だらけ”に見えた。──もしかすると、わざと負けたのかもしれない。


 決闘の後、三人は賢者のもとへ向かう。道中、カイが不器用ながらも二人を助け、励ます様子に、観客の中には微笑む者もいた。

 そして現れた賢者。魔法で顔をわずかに変えており、老練な雰囲気が漂う。


「よくいらっしゃった、お三方。茶のひとつも出せず、すまないね」


 賢者と名乗る人物は、戦争の火種となった宝石の真実を語る。

 それは、はるか昔、魔力を光と闇に分けたもの。今となっては不要な存在だが、破壊すれば世界は混乱に陥る。そして──破壊には人柱が必要だ、と。


 エルシアはそれを聞いても諦めず、「別の方法があるはず」とカイに協力を求める。

 ジルもそれに頷き、二人の決意が舞台上に鮮やかに浮かび上がる。

 そのやり取りを見つめるカイの表情は、初登場時とは違い、どこか柔らかかった。


 ……気がつけば僕も、物語に引き込まれていた。舞台の上で交わされる会話と視線に、鼓動が少しだけ速くなる。



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