22:悲劇の建国譚
「リクシィ、『黎明と黄昏の国』ってどんな話なの?」
ゼイン様が椅子を斜めに傾けながら私に尋ねてくる。
「ゼインくん、知らないのぉ? リク、教えてあげちゃって!」
……パパラはまた、私に丸投げですか。
ため息をひとつついて、私は姿勢を正す。
「では、『黎明と黄昏の国』を簡単にお話ししますね」
「登場人物は──
黎明の国の姫で光の魔法使いのエルシア=ルミエール。これはパパラの役です。
黄昏の国の王子で闇の魔法使いのカイ=ノクス。これが私。
そして、エルシアの騎士であるジル=オルトラン。ゼイン様の役ですね。
あとは、賢者フィロス。ナレーターと兼任です」
「へぇ、結構ガチな構成だな」
「そうですよ。あらすじとしては──」
私は言葉を区切り、話し始めた。
「かつて同じ大陸で栄えた2つの国──
光の魔法を操る『黎明の国』と、闇の魔法を司る『黄昏の国』。
どちらも“宝石”を魔法の媒介として使う文明を持っていました。
ですが、ある“ひとつの宝石”を巡って、争いが始まったのです。
やがて戦争は泥沼化します。王族さえも剣を取るほどに。
そんな中、エルシア、ジル、そして敵国の王子カイが出会い、戦争を止めるために行動を起こします。
彼らは賢者フィロスと出会い、争いの原因となった宝石を破壊すれば光と闇の魔法の区別が消えると知ります。
でも、代償として“人柱”が必要だと分かるのです」
「それで、どうなるんだ?」
ゼイン様が前のめりになる。
「……カイは、自分が人柱になることを選びます。
戦争で多くの命を奪ったことへの罪を背負って。
そして命と引き換えに宝石を破壊。
光と闇の魔法は統一され、民の魔力は混ざり合い、混乱の中──
エルシアが女王として立ち上がり、新たな国『ジョイエッリ』を建国します」
「それでハッピーエンドなのか?」
ゼイン様は眉をひそめた。
「……いいえ。
エルシアは、王はカイであると言い、生涯独り身を貫きます。
ジルは、エルシアに思いを寄せていましたが、その気持ちは報われず──
彼は平和を未来に繋ぐために、他の女性と結婚し、王家を残しました。
だから……誰も“幸せ”にはなっていないんです。
それでも彼らは、“平和”を選んだ。
悲しみの果てに、未来を願って」
静かになった教室で、ゼイン様がぽつり。
「……カイって、救われないな。ていうか、エルシアも」
「だよねぇー。でもさ、ジルも可哀想なんだよ」
パパラが珍しく真面目に言葉を継ぐ。
「それでも、彼らがいたから、今がある。
そんな建国譚が『黎明と黄昏の国』なんです」
ゼイン様は腕を組んで、ふうっとため息を吐いた。
「……俺、ジルできるかなぁ。俺とは違うタイプな気がする」
「大丈夫ですよ。私もカイとは全然違います。でも」
「どうにかなるかー」
「どうにか“します”。ゼイン様」
こうして──私たちの、地味に壮大な劇の猛特訓が始まった。




