21:リク王子と巻き込まれ姫
「リクさーん、起きてくださいな。配役の話し合い始まるよ~」
……ああ、そうだった。
前回の話し合い、寝ている間に終わっていて、劇をすることになっていたのだった。
「照明とか、裏方がいいです」
私は小さくつぶやく。目立つのは、苦手だ。
するとパパラが、ニタニタと笑って私を見る。
「私、今なにか変なこと言いましたか?」
「残念リク、寝てたから、もう残ってるのは主要キャラ3人だけですよ~」
「……えっ?」
「ほんとほんと。ちなみにパパラちゃんは小道具係。超楽ちんポジションです♪」
……羨ましい。
「今回の演目は『黎明と黄昏の国』ですよね。主要3人といえば、黎明の国の姫と騎士、それから黄昏の国の王子ですよね?」
「その通りです。さぁリクちゃん!どれにする~?」
パパラはにこにこと楽しげに言うが、クラスの人数が少なくて人手が足りてないこと、きっと忘れてる。だから、ここで私は一手を打つ。
「私、黄昏の国の王子を希望します」
そう言うと、場が一瞬静まった。
「私の身長なら男性としても通りますし、史実にも彼は小柄だったとあります。男装すれば問題ないかと」
「では、アレクサンドラ嬢が王子役ということで」
パパラは私が姫をやると思っていたのか、目を丸くしていた。
「へぇー、リクシィ王子やるのか。じゃあ俺、騎士で!」
ゼイン様も、配役決まってなかったのか……。
さあ、逃げ道はもうないですよ、パパラ。
「……もしかして、姫役がいない!? でも他の皆様は、すでに大道具とか照明とか、劇中も動きっぱなしの係ですし……。ナレーターや賢者役も台詞こそ少ないけど出番はあります。衣装係なんて事前準備で手一杯ですし……」
白々しく言う。
クラス委員が一通り確認するも、希望者は現れない。
「というわけで、小道具係で比較的手が空いてる方……あっ、パパラですね!」
満遍の笑みで言い放つ。よし、決まりました。
「できれば、私の方からもお願いしたいです」
クラス委員からのお願いですよ、パパラ!
彼女は、一度こちらをじっと見てから、頬をふくらませる。
「わかりましたぁ……!やりますよっ!やりますってばっ!」
……よしっ、巻き込むことに成功。
「では、とりあえず、配役決定ということで!」
パパラ、そんなに睨まれても決まったものは覆りません。ゼイン様も主要キャラですし、3人一緒に頑張りましょうね!




