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19:やっと伝えられたお詫び

結局昨日は、宝石に付与を施すため、ゼイン様と話すことなく帰ってしまった。

お詫びのつもりだったのに、これでは本末転倒だ。

「リクシィ!!昨日は本当に悪かった、お願いだから許してくれ! 口の中で怪我したんだろ? 怪我させるつもりはなかったんだよ!ただ、勝負事は真剣にやらないと気が済まなくて、、、」


背後から突然腕を掴まれ、驚いて振り返ると、そこにはゼイン様。

こちらが何か言うより先に、彼は一方的に謝罪の言葉を重ねてくる。


「ゼイン様! 本当に大丈夫ですから、そんなに謝らないでください。」


「……本当か? 良かった。昨日、けっこう怒ってただろ? しかも表彰式が終わっても見つからないし……」


安心したように息を吐き、彼はその場にへなへなと座り込む。


「ゼイン様、これを」


私は彼の手を取り、小さな宝石をそっと乗せた。


「えっ、なにこれ? まさか……パパラの爆弾!?」


目を白黒させる彼の反応に、思わず吹き出してしまう。


「違いますよ。お詫びの品です。……色々、ご迷惑や心労をおかけしたようで。すみません」


本当はもっと真面目に伝えたかったのに、ゼイン様の反応を見ると、どうしても笑ってしまう。


「ゼ〜イ〜ン〜く〜ん? 今、私のこと爆弾魔って言ったよねぇ〜?」


「うわぁパパラ! ごめんってば! てか、リクシィ、こんな高そうなもの受け取れないよ!」


……しまった。受け取ってもらえない可能性は考えていなかった。


「ゼインくん、それ、ちょっと見せて?」


ゼイン様はちらりと私の顔をうかがいながら、パパラに宝石を手渡す。

宝石を覗き込むパパラの目はキラキラと輝いている。なんだか、まるで宝探しをしている子どものようだ。


「これ、リクがやったの? ほぉ〜、ずいぶん細かいね。魔力の安定処理に、宝石の耐久性強化……あとは、なにこれ、見たことない術式」


「いざという時、自動で障壁が発動するようにしてあります」


「……ああ、前に言ってたやつか! もう形にしたんだ? さっすが〜!」


横でゼイン様は完全に置いてけぼりらしく、ぽかんと口を開けている。


「えっ、これって普通の宝石じゃなかったの?」


その言葉に、パパラの目が大きく見開かれる。


「これの……素晴らしさが、わからない……?」


「いえ、私は素人の付与ですし、そこまでのものではないかと」


「いやいやいや、謙遜しすぎでしょ!? ゼインくん、これ絶対もらっておきなよ。あとで後悔するから」


無表情でピシャリと言い切るパパラ。

いつも表情がころころ変わる彼女の“真顔”は、正直けっこう怖い。


「でっ、では……遠慮なく受け取らせていただきます。……とはいえ俺、お詫びされるようなことした覚えないけど」


ゼイン様はそう言って照れくさそうに笑った。

ああ、この人はやっぱり、心の広い人だ。

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