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18:研究者は伝えたい

【???視点】

リクシィ=アレクサンドラが試験でペアを庇ったらしい。

やはり――あの子に、似ている。

【リクシィ視点】

「残り1組を残して、試験を終了します」

結界の上空から響く声に、私はようやく息を吐いた。

どうやら、私とフォルセティア様のペアが最後に残ったらしい。


その瞬間、視界が白く染まり――


次に目を開けたとき、私は結界の外に立っていた。


「アレクサンドラ嬢!」「リクシィ!」


2つの声が、重なった。

駆け寄ってくるゼイン様とフォルセティア様。

その後ろで、パパラがニコニコと笑っている。


「やーねぇ、ゼインくんもフォルセティア様も、あなたの方に一直線じゃないの、リク」


「お怪我は?」「怪我はないですか?」


ふたりの声は、ぴったり重なった。けれど私が返事をするよりも先に――


「アレクサンドラさん、お怪我は? 表彰式前に治療を済ませましょう」


スピンネル先生の冷静な声が割り込む。


「大丈夫です。軽い傷でしたので、治癒魔法は自分でかけました」


「では、フォルセティアさん、アレクサンドラさん。表彰台へ」


その言葉を皮切りに、再び視界が切り替わる。


拍手の音。懐かしい講堂。

つい昨日、入学式が行われた場所。けれど、もう遠い昔のように感じる。


「アレクサンドラさん。あなたはひとりで数多くの組に勝ち抜きました。その実力と冷静さ、堂々たる成績優秀者です」


「そしてフォルセティアさん。あなたは得意分野を活かし、アレクサンドラさんを支えました。ふたりの連携は素晴らしかった。賞賛に値します」


スピンネル先生は静かに、それでいてしっかりと、私たちの目を見て告げる。


「おふたりには、ご褒美を用意しています。放課後、職員室まで来るように。では、本日はこれで解散です。お疲れさまでした」


深く礼をして、式は締めくくられた。


* * *


「フォルセティア様、行きましょう。職員室へ」


けれど彼の表情は、どこか晴れない。


「どうかしました?」


彼は少しだけ目を伏せ、静かに言った。


「……僕、本当に表彰されていいのか、わからないんです」


「……?」


「結晶はひとつも壊せなかった。守ることしかできなかったし、あなたに庇ってもらうばかりで……正直、いいところなんて何もなかったと思って」


その言葉に、私は小さく息を呑む。


「……私はね、友人がとても少ないのです」


「え?」


「今日、フォルセティア様が声をかけてくださらなければ、パパラと組んでいたことでしょう。けど、彼女は障壁が本当に苦手で……魔法どころか、私がちょっと触れただけでも壊れちゃうの」


「でも……僕の障壁も割られました」


「……フォルセティア様、馬鹿ですか?」


私の言葉に、彼がきょとんとする。


「ゼイン様の攻撃は、魔力の質が異常です。あれを防げるあなたの障壁は、化け物じみています。自覚してください。むしろ、私はあなたに守られました」


私は彼の顔をまっすぐ見た。まるで――前世の、あの後輩と重なる姿に、思わず。


「だから、私は全力を出せたんです。あなたが卑下するのなら、私も自分を責めなくてはいけません。そんなのおかしいでしょう?」


フォルセティア様は、一瞬だけ目を見開いて――そして、ふっと笑った。


「……それはいけませんね。アレクサンドラ嬢には、胸を張っていてもらわないと」


照れたように、けれど少し誇らしげに、彼は微笑む。


私は――その頬を、つねった。


「なっ……!?」


「笑顔は大事です。せっかくの表彰なのだから」


私が笑いかけると、彼の顔が少し赤くなった。


その後、職員室で渡されたご褒美の宝石。

私は、深紅のガーネット。

彼は、優しい緑の輝きを持つ、エメラルドのような宝石を受け取った。

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