15:油断大敵
「リタイア組の方は、あと10分で結界外へ転送します。」
攻撃が一段落した頃、静かに放送が流れる。
「フォルセティア様、何とか凌げましたね。」
「ええ。でも……この攻撃が終われば、残っている猛者たちとぶつかることになります。僕の魔力は障壁ではあまり消耗しませんが、雷系の魔法を使ってしまった分、あと2、3発が限界です。」
「なら、私が──」
パリンッ!
鋭い音とともに、障壁が砕けた。
「破られた!? すぐ張り直します!」
動揺しながらも、セリアスはすぐに魔力を集中させて新たな障壁を展開する。
その隣で、リクシィが彼の袖を引き、そっと耳打ちした。
「フォルセティア様。この攻撃……私の知り合いのものかと。独学で魔法を習得したらしく、威力が極めて高い。障壁を破られる恐れがあります。」
「独学で、ここまで?」
「ええ。詠唱は短く、媒介も不要。速射性にも優れています。」
ーー風よーー
詠唱が響いた直後、再び障壁が砕け散る。
「ゼイン様、姿を見せては?」
リクシィの静かな呼びかけに応じることなく、再度攻撃が降り注ぐ。
ーー氷よーー
今度は、セリアスが間一髪で防御した。
「アレクサンドラ嬢。右手前の、一番大きな木を狙っていただけますか?」
リクシィの言葉に頷き、アレクサンドラが魔法を放つ。木が倒れ、その陰からゼインが姿を現した。
「……よく気づいたな。」
そう言いながら、ゼインは何かを投げた。それを、リクシィがすかさず魔法で切断する。
「それは……パパラのものですね。試験前に“勝つ”と言っていたのは、本気だったようで。」
ゼインは不敵に笑みを深める。
「いくつか撒いておいたんだ。あとさ、パパラが教えてくれたけど、リクシィって、自分が狙われるより、味方が攻撃されたときのほうが反応鈍るんだってな?」
その言葉とともに、ゼインの表情はまるで悪役のように歪む。
ーー風よーー
再び詠唱が響く。
セリアスは咄嗟に結晶を守るように障壁を展開する。
だが──
「狙いは、あなたです!!!」
リクシィの叫びと同時に、ゼインの魔法がセリアスに向かって放たれる。
リクシィはパパラの爆弾の処理に魔力を割いていた。焦りが判断を鈍らせ、間に合わず。
セリアスは横に飛び退くが──
「無駄だよ。……範囲攻撃だから。」
ゼインの声が、無慈悲に響き渡った。




