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13:僕にも格好つけさせて

セリアス視点です。

彼女の凄さは、わかっているつもりだった。

「フォルセティア様、拠点に攻めて来た人はいましたか?」


人畜無害そうな顔で戻ってきたアレクサンドラ嬢。けれど、その口から発せられた言葉に、思わず聞き返してしまった。


「今……なんと?」


「拠点に攻めて──」


「その前です!!」


彼女は首を傾げながら、無邪気に言う。


「右側にあった五つのチーム、潰してきました。」


拠点防衛を担当していた僕は、反射的に時計を見る。


──試験開始から、まだ30分。


「……速っ……」


速いだけなら理解できる。だけど、彼女の魔力量は出発時とまったく変わっていないじゃないか。


「まぁ、近かったので……それで、拠点は?」


その言葉に気を取られている僕に向かって、彼女は当然のように尋ねてくる。まるで「昼食はまだですか?」くらいの調子で。


本当に、この人は自分の規格外さをまったく理解していない。


「はぁ……三人ほど来ましたが、とりあえず追い返せました。」


「さすがです!」


にこりと笑って、彼女は僕を褒めてくれる。──いや、褒めるのはこっちのセリフだ。


「フォルセティア様、今度は私が拠点を守っておきましょうか?」


「いえ、僕は障壁魔法など特定の魔法なら無詠唱・無媒介で行えます。でも、それ以外は触媒や詠唱が必要なことも多くて……。あなたが潰して回った方が効率がいいかと。任せてばかりで申し訳ないですが……」


流石に、アレクサンドラ嬢のように瞬時に敵地を駆け抜け、次々と結晶を壊していく芸当はできない。


「では、私が出ますね」


そう言って魔法をかけようとした彼女は、ふと動きを止めた。


「あっ、忘れてました」


彼女が取り出したのは、ルビーの宝石だった。


「これは……ルビー? 」


何か細工されているようだが、、、


「お顔を見れば、もうお分かりのようですね。これは私が持っているものと通信できます。何かあったら、魔力を流してください。すぐに繋がります」


「……それ、魔法研究施設のスヴァレ教授の最新研究ですよね? そんな高価なもの、ホイホイ渡していいんですか?」


「私はフォルセティア様と組むと決めたので。では──」


あっという間に彼女は姿を消した。無詠唱・無媒介の隠密魔法。気配すら残さない移動。


とんでもないものを味方にしてしまった──いや、これは運が良いというべきか。


そう思った矢先、不穏な魔力の揺らぎが視界に映る。


「……来ましたね」


敵が拠点に向かってきている。無言で詠唱を開始し、すぐさま障壁を展開する。


―風よ、我が剣となり、目の前のものを切り裂け―


「なっ、はじかれた!? いつの間に障壁を……!」


「残念ですが、彼女の足を引っ張って嫌われるわけにはいかないので」


魔力を耳飾りのトパーズに流し込む。


―雷よ、敵を撃て―


電撃が走る。命中したようで、敵の魔力が転移魔法によって消えるのが見えた。


彼女の背中を見送ったあとの戦闘は、少しだけ背筋が伸びる。自分も、ただ彼女を観察するだけで終わりたくはない。


そう思いながら空を見上げると、どこかで魔力が舞っていた。


……やっぱり、アレクサンドラ嬢の魔力は、美しい。

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