私を“見つけてくれた”人たち
周りから気付かれない、極度の影の薄さ。
昔からの体質で、自分じゃあどうにもならない欠点。
己の存在力が魔力の出力に直結するこの世界においては、魔法使い最大の欠陥とも言える自身の特性に、それでも魔法を使う事を諦められなかった少し前の私。
そんな私が、まさか誰にもいると気付いてもらえないが故にできなかったお友達やお姉様方ににこんなにも恵まれる未来が来るなんて、一体どうして想像できただろう。
「レミリス、初めての共同作業だね! 準備はいい?」
「はい、ユーお姉様」
緊張で手に汗握りながら、それでも真面目に答えた私に、お姉様は二ッと強く笑った。
「肩の力を抜いて。大丈夫。だってレミリスは、一人じゃないもの」
言われて、改めて辺りを見回す。
夜、寮の門限なんてとうに過ぎてしまっている時間。
忍び込んだ他領の裏庭で、古井戸を囲む私を入れて六人の女の子たち。
「ががが、学園の七不思議、怖くない……」
「そんなに震えなくっても。七不思議といっても、相手は実体のない超常現象などではなく、かつて学園で行われた様々な魔法実験や魔法制作が、今も残って悪さする現象だもの。大丈夫よ、ノスディ」
「大魔法使いの誰かの遺物相手に腕試しできるなんて、こんなに心躍る事ないよね!」
「ミミリお姉様、興奮に胸を躍らせるのはいいですが、ちゃんと集中してくださいねっ?!」
思い思いに口を開く面々のある種いつも通りのやり取りに、少しばかり緊張がほぐれる。
私も頑張ろう。
そう思い、すぅとゆっくり深呼吸をして。
「号令と共に、皆さん副祭壇に魔力を注いでいってください。その後の操作は私が担います。――始め!」
ノスディアさんの『姉妹』・シルビア様の号令で、魔法儀式が始まった。
夜の裏庭に、四つの魔法光が点灯する。
私は自分の魔法媒介を、ギュッと握りしめた。
家でただ一人、魔法が使えない私に優しくしてくれた、お祖母様。
彼女がかつて使っていた、そして今は私の魔法媒介の柔らかな手触りが、私を優しく鼓舞してくれているような気がした。