山本桜井木曽の掃討作戦を実行する
次の日の昼休み
「だから!!!身の程をわきまえろって言ってんの!!わかんだろうが、あぁ?」
「これだから下賎の犬は……」
「低能すぎて物の道理もわかんねぇんだろ。お前風情がお目をかけていただける相手じゃねぇんだよ!!!」
あいも変わらず親衛隊に弁当を踏み潰されていると、”それ”は来た。
「ねえ……何やってんの、山本?桜井?木曽?」
「う、宇治宮様……!?」
「こ、これは………」
「その……」
「弁当は、”俺が”頼んでたんだけどな?」
「で、ですが!!こんな下賤のものの作る食事など!!」
「そうです!!僕達は宇治宮様のためを思って!!」
「こんなやつの食事を食べるなんてどうかしています!!お考え直しください!!」
「……そうだね。俺は考え直す必要がありそうだ。」
「宇治宮様……!!」
「ありがとうございます…!!」
「流石です……!」
「君たちの、処遇を。」
そう言って生徒会長が見せたのは、一本の動画だった。
弁当を踏みにじるところから始まり、靴箱に画鋲、机に毒蛇、教科書にはカミソリを入れ、鞄は切り裂き、挙げ句は倉庫らしき場所に閉じ込めて暴行を加えている。
ネットに上がった瞬間に燃えて解像度爆上げされて身元突き止められるくらいにはひどい動画。
「これは、なんだ?」
「ど、どこからそれをっ…!」
「っ、それは…僕らじゃないです!!」
「そうです!!」
「ふぅん、そう。ちなみにこれ音声付きの動画もあって、それにはしっかり首謀者たちが名前呼びあってたんだけど。君らが今やってたことも考えなね。」
「「「……」」」
崩れ落ちた3人に向けて、人格者な生徒会長は言い放った。
「今後の処遇の話だ。君たちの処遇はここにいる被害者の氷室くんの裁量で決まる。刑事告訴、放校処分、さらには実家への処罰も十分考えられる。君らはそのことを念頭に置きつつ、今のところ謹慎していなさい。追って沙汰する。」
「「「は、はいぃ………」」」
くるりと後ろを振り向いてこちらを向いた宇治宮様は、俺の前にしゃがんだ。
「俺の親衛隊が暴走してしまってすまなかった。毎日、善意の掃除じゃなかったんだね……彼らの片付けだったんだ。気づかなくて本当にごめん。全部俺の責任だ。」
そうだよ!!!てめえの監督不行き届きが招いた行動だよ自分の親衛隊くらい自分で管理しろボケ!!!!!!
という心の声を押し殺し、あたかも何もなかった、みたいな無表情で見上げる。
「…いえ。先輩のせいじゃありません。俺が至らなくて。」
「君は、こんなときでも何もなかったような顔ができるのか。」
「まあ、そんなもんでしょう。じゃあ、俺はこれで。」
立ち上がってホコリを払う。
大体の地面の汚れも取れたしもういいか、みたいな顔つきで。
「っ、ちょっと待って!!」
一歩踏み出して、肩に手がかかった。
見ると、少し赤い綺麗な顔。
「、また、弁当作ってくれない?」
「……ま、いいですよ」
そう言って、嬉しそうな顔に背を向け、振り向かずに立ち去った。
高校生とはなんとも単純である。
あーー、帰って報告書書かなきゃ。