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キレる氷室

そして人が消えた瞬間。


「あーーーーー苛つくっ!!!!」


ぐちゃぐちゃになった弁当をそのまま持参のゴミ袋へ。


そしてゴミ袋を踏み潰す。紙製の弁当箱がべき、と音を立てるが気にしない。お前らはどうせ堆肥になる。さらば。


「まじ!!!なんなの!!!なんで飽きねぇんだよ!!!!」

毎日毎日よぉ!!最近のおぼっちゃまは暇人だな!!


と言いながら丁寧に地面をおしぼりで拭く俺。偉い。


「うわ、あいつら踏み潰した足でそのまま行ってやがる。き、た、ね、え!!」


「な。それによくお前も毎日毎日飽きないね。今日も掃除?」


しゃがみ込み、地面に水をぶっかけて洗い流していると、上から声が聞こえた。


「う、宇治宮様!?」


「生徒のマナーが悪くて済まないね。」


「い、いえ、そんなことは…」


蜂蜜のような甘い声の持ち主を振り返ると、彼は思ったより近くにいた。

作りの小さい、眉目のすっと通った美しい顔。

宇治宮 晴 様。御本人である。


「本当に?じゃあこれは…何かな?」


ゴミ袋を指さされると、何も言えなくなってしまう。


「はぁ……そろそろどうにかしないと…あと今日も弁当はだめだったか。親衛隊にもらったからいいけど。」


「今日お弁当、渡せなくてすみませんでした。」


「いーよいーよ。ところで、性懲りもなく頼んでいいか?君の弁当は美味しそうだ。もちろん材料費は払うから。」


「は、はい……」


俺が親衛隊からどんな制裁を受けてきたかも、受けるかも。

せいぜい時間がなくて弁当作れなかったんだろうくらいにしか思わない、俺が捨てられた弁当掃除しててもマナーの悪い生徒が散らかしたあとを捨ててくれているんだろうとしか思わないこの人は、すごく簡単に残酷なことをする。


でも、


しょうがない。

俺はこの人に興味を持たれてしまったから。弁当作れ、とか。どこの王様だよと思わなくもなかったけど。

生徒会長のご命令に従わないと、それこそ親衛隊が騒ぎ出す。面倒くさい奴ら。







ここは私立光桜学園。


伝統と格式を重んじる由緒ある男子校で、学費とプライドと偏差値は日本一高いと言われる学園である。


日本の大概の裕福な家はこの学園に子供を入学させることがステータス。エスカレーター式の全寮制の男子校であり、成績が良ければ外部から編入することも可能だが、編入は日本一厳しいんじゃないかと話題の学園なので大概の親は初等部で生徒を寮に投下する。



初等部から徹底した男子校で、教師も男性のみ。紳士教育を真の髄まで叩き込むためのそのカリキュラムは、ゲイ率3割バイ率6割異性愛者率1割の結構な異常環境を生み出した。


またクラスも容姿や家柄、成績をもとに分けられていて、それがさらに格差を発展させている。

そしてそれに伴って中学2年生あたりで発生するのは親衛隊システムである。

特別容姿の美しいもの、性格がいいものに自発的に作られるそれはもはや宗教。

崇拝対象に近づいたふさわしくないもの(判断基準は親衛隊)には容赦なく制裁を下す軍隊もびっくりな独裁システムを真顔で採用している。



容姿が美しく、才能があり、かつ実家が金持ちな者だけがのし上がっていける正真正銘のおぼっちゃま学校。それが光桜学園なのである。

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