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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十五章:カチコミの時間じゃい!

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683.キレ過ぎだろ part2

「………」


 いや「なーにを初歩的なことを」みたいな顔されてもさ。

 そこんとこがフワフワしてるせいで、話に入っていけないんだよこっちは。


「お前が知ってる世界とこの世界が同じだって、何を根拠に断言してるんだよ」

「だからさあ、わたしには記憶があるんだよ。人類が辿った歴史のさあ」

「それは、『お前の世界』の話だろ?どうしてそれが、この世界のベースになってるって……って言うか、おい、ちょっと待て」


 言ってたら、なんかどんどん気になってきた。


「お前、ダンジョンが無い、つまり魔法とか魔学が全然ない世界の記憶があるってことだよな?つまり、牲歴が始まってからの歴史が、お前が知ってるものと全然違うっていうことだよな?」


「その暦もさあ、本当は西暦とかキリスト紀元とか言われてるもので」


「いやそういう話は今どうでも良くて。要はお前がダンジョンになる以前は、そこに紀元ゼロ年からの、ダンジョンが存在しない世界の積み重ねがあったわけだろ?」


「そうそう!そうなんだよ!その2000年が、更に遡ってより過去に至るまで、外来種が居着く為の整合性の為に改変されることに、我慢がならなくて——」




「じゃあお前、なんで永級1号なんだよ」




「……うん?」


 なんか、俺が変なこと言ってる、っていう態度を投げつけられた。

 ちょっとムカついてきたな……。


「いや、だからぁ、わたしが選ばれたからあ」


「そうじゃなくって、お前、そのキリスト歴とやらが始まってから、2000年くらいの積み重ねがあって、っていう世界で生まれたんだろ?って言うか、死んだのか?まあどっちでもいいけどさ。


 で、お前の言う通り、ダンジョンがその後に来たとするよ?


 じゃあなんで最初のダンジョンが、紀元元年(がんねん)に生まれてるわけ?少なくとも、時系列的にはお前が死んだ後に、21世紀以降に来るんじゃないのか?」


 それとも何か?元の世界で2000年の未来を見通してた、とか言うのか?

 でもこいつの場合、そうならそうと言うはずだ。

 “予言者”なんておいしいポジションを、主張しないでいるわけがない。


「いや、ダンジョンによる歴史改変は、過去に遡って——」


「でもお前は、永級1号として2000年前にこの世界に生まれたんだろ?で、その後に続くこの世界の2000年を、お前自身が体験したんだろ?後発のダンジョンのせいで、歴史がどうやって書き換えられてきたか、みたいなところまで見てたわけだろ?お前が元居た世界と、この世界が同じものだって考えたら、時間軸が繋がらないじゃん」


「ダンジョンは時空を超えるんだから……、だから、そういうことだって——」


「いやまあ絶対ないとは言わないけどさ。でもそれ、お前の世界とこの世界が同じって言い張る根拠が薄い、って話になんない?って言うか、ダンジョンとか魔法とかってデカい差があって、歴史も全然違うんだろ?だったら別の世界だって考えの方が、説得力強いんじゃないのか?普通にさ」


 元の世界の21世紀に起こった死の物語であるコイツは、その後忘れられた後に、この世界の1世紀に漂着した。

 そう考えるのが一番自然だ。


 もしかしたら紀元前の歴史が似てるとかあったかもしれないけど……うん?


「あれ、ってか根本を聞くんだけどさ。お前が知ってる元の世界の歴史って、どこまで正確なんだ?魔学とかない世界で、2000年生きてた、って話でもないんだろ?お前が『知ってる』って過去の信憑性は、どうやって証明してるんだ?


 歴史研究家とかだったのか?でも、文献とか一次資料とか漁ったとしても、勘違いだとか嘘だとか混ざってたりするし、そうじゃなくても完璧には伝わらないじゃん?


 それともお前が居た世界には、タイムマシン的な物が開発されてて、過去のどんな出来事も正確に知れるようになってたりとか?スゲーな。お前何年くらいに死んだの?あと何年くらいでそういうことに——」


(((ススムくん……)))


 気になることを適当に並べていたら、カンナに肩を叩かれた。

 見ると、袖の後ろでプルプル震えている。


(((そのあたりに……くふっ、してあげてください……!なんともむごく……、見ているには忍びなく……っ!ぷふふ…っ!)))


 何故だか爆発的に大ウケしている彼女から視線を切り、“提婆キャメル”の方を向く。


 奴はもうパフォーマンスを見せてくれなくなっていたし、顔は今までで一番の無表情で固められていた。


 この炎天下でも蒼白に見えるくらい、血の気が感じられなくて、短い間に蝋人形と入れ替わったのかと思う程だ。


「きみは……」


 「ふはっ」、

 やっと話し始めたと思ったら、急に吹き出した。

 

「ふふっ、きみはさ……、ふぶっ、きみって、さあ……!へへはっ」


 何がそんなに面白い……いや、違うな。

 これは腹から抜けてきた過剰な力みが、口から漏れて吐息になっているんだ。


 何かを抑えようとして、笑ってるみたいな空気の噴出が起こっている。

 隠し事をしている人間にありがちなやつ。


「きみは……くふひっ、ダメだなぁ……、ふすっ、ダメダメダメ……、フんふ…っ、絶対にダメだ……」


 咄嗟に構えて魔力探知の範囲を広げ、その判断が正しかったことがすぐに確かめられた。


「こんなに他者を不愉快にすんだからさあッ!」


 サイドステップ!

 煉瓦色の光線がすぐ横を通過!


「消えなきゃいけないよねぇッ!?だってさあッ!だってわたしに、こんなにイヤな思いをさせるんだからッ!」


 速い!

 弾丸とかの比じゃない!

 撃ってからでは見切れない!


 魔力の予備反応の時点で見抜かないと避けられない!

 

「世界の意思であるわたしが不快なんだから、つまり悪いモノだって判定されたってことでいいよねぇッ!?はい害悪決定ぇーッ!」


 風も無いのに砂が巻き上がり、幾つもの光線発射銃身が構築されていく!


「ワルモノなんだからさあッ!!塵も残るなよッ!わたしの前にッ!それが義務だろッ!!」


 射線の隙になんとか体を割り込ませる!

 熱でシールド表面がチロチロと弾ける!


「あー決めた!今決めた!わたしは決めたね!決めちゃった!」


 岩石を融かして刺さり込んだ無数の煉瓦色!

 その下で火山性ガスが弾けて噴火が発生!


「おまえは世界に残してやんない!!一切れの肉も、インク一滴の文字情報も、1ビットの記憶も記録もぉ!それを保持する媒体ごと、憶えてる脳ミソごとぶっ殺すッ!!」


 岩石散弾を蹴り渡りながら接近しようとして、炎を宿した砂の塊に阻まれる!

 ここにもA型の群れ!


「わたしの世界におまえの居場所なんて、1ミクロンも用意しないッ!!!」


「こわっ、なんで急にキレてんだよ」


「あああああああムカつくムカつくムカつくクソガキィッ!!!!!!」


 うわあ、どんどんヒートアップしてく……。

 クソ暑苦しいローカル持ちとは言え、そこまでカッカすることないじゃん。

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